学力底上げへビッグデータ駆使 文科省が工程表

文部科学省は25日、小中高校や特別支援学校の教育にビッグデータや先端的な情報通信技術(ICT)を活用する計画を公表した。2025年度までに児童生徒1人につき1台の教育用のパソコンやタブレットが利用できる環境を整備するなどとした工程表を示した。多様化する子供の個性に合わせた指導ができるようにし、情報化社会で求められる創造性のある人材の育成につなげる。
人工知能(AI)やロボット技術が発達する中、新たな知を発見・創造できる人材は不可欠になっている。同省は、教室で同じ内容を一斉に教える従来型の指導では、急速に進む情報化の中で個々の子供の強みを伸ばすのは難しいとみている。

教育用のパソコンなども、同省が18年3月に全国の公立小中学校、高校を対象に実施した調査では1台当たりの児童生徒数が平均5.6人と、十分に整備が進んでいない状況だった。欧米では教育現場でICTやビッグデータが活用されており、日本も本格的に進める必要があると判断した。
同省は、教育に関するビッグデータとして、子供の氏名や性別、健康状況、定期テストの結果や評定、出欠・遅刻・早退の状況、デジタル教科書の参照履歴、授業での発話回数、ドリルの解答状況などを全国的に集めることを計画している。
集めた学習活動などのデータはAIで分析し、個々の子供の興味・関心や得意な分野などに応じたきめ細かな指導につなげる。データをもとに子供が自発的な学習をするのに最適な教材を薦めたり、苦手分野を学び直すためのオーダーメードのドリルを作成したりすることを想定している。
デジタル教科書や仮想現実(VR)、拡張現実(AR)なども創造性を伸ばすために活用する。デジタルコンテンツや映像を使うことで理解を手助けするとともに、興味ある分野をより深く学べるようにする。遠隔教育を拡充して専門家や海外の研究者ら多様な人材から学び、最先端の知見に触れる機会もつくる。
国や研究機関は、テスト結果などのデータを、各学年で学ぶ内容を定めた学習指導要領の改訂など教育施策の改善に使う。データを分析して子供の理解が進んでいない項目を浮かび上がらせ、指導方法を見直したり教える学年を後ろ倒しにしたりすることを検討する。
従来の教員は自らの経験に基づいて授業をすることが多かった。同省は、学習履歴のほかに出欠や健康状況などの客観的なデータも併せて活用することで効果的な指導ができると期待する。
実現への課題は多い。データを集める主体やデータの所有権などは未定。個人情報の漏洩といったセキュリティー上の問題への対応も欠かせない。コンピューターの整備には多額の予算が必要になる。同省は安価な端末を供給してもらうよう民間に協力を求めるほか、私物のスマートフォンを学校でも使うことで対応したい考えだ。
同省は19年度中にも有識者会議を立ち上げてデータの収集方法や活用時の課題を議論し、20年度に結論を出す。
欧米は教育ビッグデータの活用などで先行する。同省によると、英国では公的機関が収集すべきデータをガイドラインで提示し、特別な指導が必要な子を自動でリストアップしたり、子供の学力の伸びを測ったりしている。米国でもほとんどの学校が共通のシステムに子供のデータを蓄積し、授業の設計や指導に使っているという。