保険適用1年で4件だけ 性別適合手術、学会まとめ
性同一性障害(GID)の性別適合手術に公的医療保険の適用が始まった昨年4月からの1年間で、生殖器の摘出や形成の適合手術に保険が適用されたケースが4件だったことが24日までに、GID学会(事務局・岡山市)のまとめで分かった。この間、保険適用が認められる認定病院で実施された手術は約40件で、適用は1割程度にとどまる。
大半の患者は手術前に保険外の自由診療であるホルモン療法を受ける必要があるが、保険診療と自由診療を併用すると混合診療と扱われ保険適用外となり、全額を自己負担しなければならない。同学会はこうした問題が制度が普及しない背景にあるとみて「ホルモン療法にも保険を認め、多くの人が手術を受けられるようにすべきだ」と改善を求めている。
GID治療の指針では、手術前にホルモン療法を実施するのが基本。ホルモン剤を投与して望む性に近い状態にし、心身に問題がないかどうかを診る。精巣や卵巣の摘出後は性ホルモンの分泌が止まって心身に大きな変化が生じるため、ホルモン剤を継続的に使うが、副作用の有無を事前に調べる必要もある。
4件について、同学会は年齢など詳細を明かしていないが、いずれも男性から女性への手術で「高齢でホルモン療法の必要がないなど例外的なケースだ」としている。保険適用が認められるのは岡山大病院や山梨大病院など学会認定の6病院で手術した場合で、うち2施設で実施された。
生殖器の摘出や形成の費用は70万~200万円ほどに上るが、保険適用されれば原則3割負担で済む。同学会によると、認定病院でない国内の医療機関や費用が安価な海外で手術を受ける例が多いという。
厚生労働省医療課は「混合診療が課題となっている現状は把握している。ホルモン療法の保険適用に向けては学会に助言するなど連携して対応中」としている。〔共同〕