不妊治療支援、企業に要請 厚労省が制度導入の手引策定へ
不妊治療と仕事を両立できずに離職したり、逆に治療を諦めたりする人が多いことを受け、厚生労働省は、両立を支援するための企業向けマニュアルを初めて策定する方針を固めた。2019年度中に完成させ、都道府県などにある「不妊専門相談センター」のほか、全国の労働局、経団連など経済団体を通じて周知する予定だ。
不妊治療は通院回数の多さや、精神的負担の大きさから仕事との両立が難しいが、退職すれば経済的な負担ものしかかる。
厚労省の調査によると、不妊の検査や治療を受けたことがある夫婦は5.5組に1組程度。不妊治療を経験した人の16%は、両立を諦めて離職した。一方で企業の約7割は従業員が不妊治療をしているかどうか把握していない。
マニュアルは、各企業が制度を導入する際の手引として使用されることを想定。不妊治療と仕事を両立する際の課題を知ってもらうため、治療経験者の具体的な悩みや治療の実態なども盛り込む。先進的な企業の両立支援制度を紹介し、制度導入のメリットを盛り込むことも検討している。
今後、不妊治療に詳しい医師や企業労務の専門家などによる委員会を開き、詳しい内容や効果的な周知方法を決める。マニュアルのほか、不妊治療への理解を深めるパンフレットも作成する。
厚労省の担当者は「治療をしていることを周囲に知られたくない人や、仕事を辞めて高額な治療費を負担している人もいる。企業にとっても貴重な人材を残すことができるので、社会全体で取り組みを進めることが重要だ」と話した。〔共同〕