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八村、NBAの高い壁突破 中学時代の原点と覚醒
スポーツライター 丹羽政善

(2/2ページ)
2019/6/24 6:30
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八村は「日本でやってるだけじゃだめ」と話し、こう続ける。「僕がよかったなって思うのは、U-16(16歳以下)でアジア大会へ行ったり、U-17で世界大会へ行ったり、そういう海外でやったことの経験がここにつながっている。日本だけでやるとなるとキツイ。海外で短期でも挑戦するっていうのがいいんじゃないかなと思う」

全国選抜に入り合宿、急カーブで成長

そんな一方で、岡山と長友は声をそろえた。「中2のとき、塁がU-14に選ばれたのだけど、戻ってきてからすごい意識が高くなった」

八村が「U-14男子トップエンデバー」のメンバーに名を連ねたのは、11年9月のこと。全国で選抜された30人のうちの一人として、味の素ナショナルトレーニングセンターで行われた3日間の合宿に参加した。戻ってきたときの変化を、岡山は忘れられない。

「一気に変わった。気づいたら、ああなっとった(笑)。2、3年生になると、相手も『塁は止められない』という感じだったから」

その言葉を八村に伝えると、「えっ? 全然覚えてない。彼らの方が覚えてるんじゃないですか」と笑ったが、あの合宿をきっかけに八村の成長は急カーブを描いた。

さて、ドラフト当日の20日、八村は午後5時半すぎに1巡目での指名が予想される選手たちに用意された「グリーンルーム」という控えエリアに姿を見せた。他の選手はそこで家族と記念撮影をするなどしていたが、八村は指定されたテーブルにつくと、1時間以上、一人きりになった。

ドラフト当日、控えエリアで一人きりの時間を過ごす八村

ドラフト当日、控えエリアで一人きりの時間を過ごす八村

3月30日に全米大学選手権(NCAAトーナメント)で敗れ、4月半ばにアーリーエントリー(大学を中退し、NBAドラフトに登録)を決断。その後、興味を持ってくれるチームがあれば、ワークアウトに出向くなど、忙しい日々を送った。ドラフトが行われるニューヨーク・ブルックリンには18日に入ったが、空港からテレビカメラが密着するなど、相変わらず慌ただしかった。前日も会見や子どもたちとのイベントに時間を割いている。

そんな中で期せずして生まれた静かな時間。ふいに、これまでのバスケット人生がよみがえった。「今まで中学、高校、大学でやってきたことを思い浮かべたりしてましたね」

そこでは、いろんなチームメートの顔が浮かんだに違いない。日本でドラフトの中継を見ていたという岡山からは直後、「快挙すぎて……」という言葉が送られてきたが、改めてこんなメッセージが届いた。

「ここからが塁のストーリーの始まり。今まで以上に成長して、オールスター級のプレーヤーになってほしい」

田臥勇太(栃木ブレックス)が日本人として初めてNBAのコートに立ってから15年。これまで多くの日本人選手が挑戦しては、跳ね返された。昨年、渡辺雄太(グリズリーズ)が久々に続くも、厳密に言えば、NBA契約ではない。

八村は今回、日本人では突破が難しいとみられていたその壁を、正面から痛快に突き抜けた。

(敬称略)

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