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八村、NBAの高い壁突破 中学時代の原点と覚醒
スポーツライター 丹羽政善

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2019/6/24 6:30
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八村は中学入学時、クラスメートに誘われてバスケットを始めた=AP

八村は中学入学時、クラスメートに誘われてバスケットを始めた=AP

「クラスメートにバスケ部の子がいて、その子が『来い来い』ってしつこくて(笑)」

2010年4月、八村塁は富山市立奥田中学に入学。同じクラスとなり、春休みからバスケットボール部の練習に参加していた岡山翔太郎から、「バスケットをやらないか」と誘われた。いや、八村の記憶では「誘われた」程度の話ではない。

「本当にしつこかった」。苦笑しながら、さらに遠い記憶をたどる。

「期間があるじゃないですか、部活を決めるまでの。それが2週間ぐらいだったと思うけど、その間は毎日来ていた。本当にしつこいから、『分かった、行くから』って」

「行く」とは行ったが、「入る」とは言っていない。八村は見学のつもりだった。

一方、しつこく声をかけた岡山。内心では「無駄かなと思っていた」という。「もともと(八村は)野球をやっていたんで、野球するんかなって思っとった。実際、野球部の顧問から誘われてましたから」

NBAのドラフト会議でウィザーズから日本人初となる1巡目指名を受け、笑顔で天を指さす八村(NBAE提供)=ゲッティ共同

NBAのドラフト会議でウィザーズから日本人初となる1巡目指名を受け、笑顔で天を指さす八村(NBAE提供)=ゲッティ共同

小学校1年のときに始めた野球は「6年生まで続けた」と八村。投手をやったこともあったが、球が速く誰も捕れなかった。「僕、すごかったらしいです(笑)」。仕方がなくキャッチャーをやっていたが、「なんか、違うなあって」。

岡山同様、熱心に八村に声をかけたのが、後にバスケット部のキャプテンとなる長友陸矢である。しかし長友も、「陸上をやるんかな」と、なかばあきらめていた。

「(小学校のとき)自分も少し陸上をかじっとって、小5のとき、塁が富山県大会の100メートルで優勝したレースを自分はたまたま見とった。『うわぁ』と思っとったら、それが後の塁だった」

コーチに「いいぞ~!」と褒められ

その話は八村もしたことがあった。「陸上で全国大会へ行ったんですよ。富山県で新記録を出したりしていた」

八村はその年、国立競技場で行われた第24回全国小学生陸上競技交流大会に出場。予選2組で3位に入り準決勝に駒を進めるも、6位に終わった。いち早く全国に触れた八村の気持ちは実際、長友が振り返ったように陸上に傾いていった。

ところが、である。「見学に行ったら、まんまと、その気にさせられて」

八村はコーチの坂本穣治から、何をやっても「おぉ、いいぞ~!」と褒められた。「家に帰ってお母さんに『バスケやるかもしれない』って言ったら、『いいんじゃん』って」

そんな軽い気持ちでバスケットを始めた八村が20日、米プロバスケットボールNBAのドラフトで1巡目、9位でウィザーズから指名された。

人生はときに、思わぬ展開を見せる。

NBA入りを意識した原点もまた、その中学時代にある。坂本からNBA入りを目標に設定するようアドバイスされたことがその後の指針となったわけだが、19日にドラフト1巡目での指名が有力な20選手が招待された記者会見で八村は、改めて当時を振り返った。

「中学校で(バスケ部に)入って、本当に何もできない、バスケしたことのないような子を見て、どうして『おまえはNBAに行くんだ』って言ったのか。しかもコーチは、ジョークでも何でもなかったし、本気で言っていて、僕も最初はNBAがなんだか分かっていなかったし。でもそういうふうに言ってくれたから、それを信じてやってきて、こういうふうに現実になった」

坂本コーチにしてみれば、まさか本当に……ということかもしれないが、では何が、八村を覚醒させたのか。

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