2019年8月26日(月)

対話のドア、開くべきか 日韓・米朝…外交の前哨戦

風見鶏
コラム(経済・政治)
2019/6/23 2:00
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「非公式であれ、会談すべきではなかった」。5日、自民党の国防部会で岩屋毅防衛相への批判が出た。1日に韓国の鄭景斗(チョン・ギョンドゥ)国防相とシンガポールで会談したことがやり玉に挙がった。

非公式会談で握手する岩屋防衛相(右)と韓国の鄭景斗国防相(6月1日、シンガポール)=韓国国防省提供・共同

非公式会談で握手する岩屋防衛相(右)と韓国の鄭景斗国防相(6月1日、シンガポール)=韓国国防省提供・共同

韓国海軍は2018年12月、自衛隊機に火器管制レーダーを照射したが、韓国側は照射を認めていない。そんな中で会談に応じれば、韓国のペースにはまってしまうとの懸念だ。

岩屋氏にとっては韓国との連携へ環境を整えたい狙いがあった。本当にどこまで連携できるかで会談の評価は定まるだろう。

対話のドアを開けるべきか、閉ざすべきか。

開けることで相手から譲歩を引き出すなど日本にとって利点があるなら意味がある。会ってもかたくなな態度で、対話に応じたことを利用されるなら、実りはない。安易に歩み寄った印象になれば批判を浴びかねない。

日韓の間では首脳会談を開けるか見通せない。28、29両日に大阪市で開く20カ国・地域首脳会議(G20サミット)には安倍晋三首相と文在寅(ムン・ジェイン)大統領が出席する。政府は首脳会談をするには、日本企業への賠償命令が相次ぐ元徴用工訴訟を巡り、韓国側が解決策を示すことを事実上の条件とする。

首相周辺は「日韓首脳会談は難しい」と話す。7月の参院選を控え、韓国へのいらだちを募らせる保守層への意識もうかがえる。国内の政治基盤が安定しているからこそ、強気の態度も取れる。

文大統領が安倍首相と会談できなければ、韓国の保守層から批判が出るかもしれない。それでも文政権の配慮が目立つのは革新層で、韓国政府の関係者は「対日関係で譲れる政治的な資産は乏しい」と語る。

首相は北朝鮮との首脳会談は「無条件」で呼びかける。「金正恩(キム・ジョンウン)委員長と条件をつけずに向き合わなければならない」と対話に臨む決意を明確にする。しかし北朝鮮は2日に「厚かましい」と外郭組織を通じてけん制した。政府高官によると、北朝鮮は「敵視政策」をやめ、制裁を緩めるよう日本に求めているという。

首脳会談の開催を駆け引きに使うのはトランプ米大統領のディール外交でもよく見られる。外交当局が会談のシナリオ作りを周到に準備するのではなく、トップが会うかどうかをまず交渉の材料とする。

トランプ氏は中国には、首脳会談を拒否するなら「第4弾」の制裁関税を課すと揺さぶりをかけた。習近平(シー・ジンピン)国家主席は18日のトランプ氏との電話協議で、G20サミットに合わせて会談することに応じた。拒み続ければ制裁発動の口実にされかねず、対話のドアに立った。中国共産党の幹部は「中国内でどう受け止められるかが大事だ」と、押し切られた印象が出るのを警戒する。

トランプ氏は北朝鮮に対して3度目の首脳会談の可能性をちらつかせる。20年の大統領選の再選をにらみ、成果を誇示できる時機を探る。北朝鮮が包括的な核放棄を認めれば成果としてアピールできる。大きな合意がないままでも核実験や大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射を抑えていれば一定の評価を見込める。

北朝鮮では核放棄に軍部の反対論が根強いとみられる。制裁で経済の苦境は続いている。金正恩氏がトランプ氏と会談して、再び制裁緩和などの成果がなく手ぶらで帰ったら、威信を傷つけるリスクがある。

会談のドアを開くかどうかは、首脳の政治基盤をにらんだ判断になる。外交の前哨戦は内政を色濃く反映している。(佐藤賢)

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