社会保障、負担議論先送り 骨太方針を閣議決定
参院選控え論争避ける

2019/6/21 20:10
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臨時閣議に臨む安倍首相(21日、首相官邸)

臨時閣議に臨む安倍首相(21日、首相官邸)

政府は21日、経済財政運営の基本方針(骨太の方針)と成長戦略を閣議決定した。全世代を通じた社会保障を掲げ、70歳までの就業機会確保や就職氷河期世代の支援などを打ち出した。ただ参院選を控え、医療費などの負担増につながる議論は2020年度に持ち越す。解雇規制の緩和といった反発のあるテーマも避けた。

政府が毎年夏にまとめる骨太の方針と成長戦略は、年末に向けた予算編成の土台になる。安倍晋三首相は21日夕の経済財政諮問会議で「経済の回復基調を持続させ、経済財政運営に万全を期していく」と強調した。

今回の骨太方針は10月に消費税率を8%から10%に引き上げることを改めて確認した。経済状況を踏まえて20年度予算で「適切な規模の臨時・特別の措置を講ずる」とも明記。さらに米中摩擦などで不透明な海外経済の先行きを念頭に「機動的なマクロ経済政策をちゅうちょなく実行する」として、追加の経済対策に向けた布石も打った。

中期的に内需を下支えするための所得向上策も盛り込んだ。30歳代半ばから40歳代半ばの就職氷河期世代を3年間で集中的に支援し、この世代の正規雇用者を30万人増やす。最低賃金は目標としている全国平均1000円を「より早期に」実現するとした。

少子高齢化が加速するなかでの社会保障は「全世代型」と銘打って、70歳までの就業機会を確保する法整備の方針を示した。短時間労働者への年金・医療の保険適用拡大や、働く高齢者の年金を減額する在職老齢年金の見直しも盛った。

当面の経済政策に腐心する一方、参院選を控える局面で抜本的な構造改革や政策論争を避けた印象がぬぐえない。ニッセイ基礎研究所の矢嶋康次チーフエコノミストは「賛否が割れる問題をほとんど盛り込んでいない。政権維持に向けた分配政策に偏っている」と指摘する。

社会保障改革の本丸の論議は遅れている。19年は5年ごとの年金財政検証の節目にあたるが、まだ公表されていない。後期高齢者の医療費なども含めた社会保障全体の給付と負担の見直しは18年末にまとめた工程表に沿って、20年度の骨太方針でまとめるとの既定路線の記述にとどまった。

最低賃金についても、議論の過程で浮上していた具体的な年率目標を明示するには至らなかった。最賃の引き上げは中小企業などに生産性の向上を促す取り組みのはずが、中小企業の反発を考慮して書きぶりが曖昧になった。成長戦略でも、経済界が要望する解雇規制の緩和のような踏み込んだ取り組みは乏しい。

第2次安倍政権が初めてまとめた13年度の骨太方針は22年度までの10年間で平均2%程度の実質成長率を実現する目標を掲げていた。これまでのところ潜在成長率は1%前後に低迷したまま。実際の成長率も14~16年度の3年間、潜在成長率との差である需給ギャップがマイナスに沈むなど低空飛行が続く。

日本総合研究所の山田久理事は「全体の方向性は間違っていない」と今回の骨太方針を評価する一方で実効性を問題視する。「昨年の骨太で打ち出された『学び直し』も具体的にどう進めていくのか1年間で詰められていない」。7年目を迎える長期政権。改革の推進力が改めて問われる。

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