2019年7月19日(金)

長浜(福岡・中央)「替え玉」生んだ人情の灯

今昔まち話
コラム(社会)
九州・沖縄
2019/6/22 11:34
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九州最大の繁華街・天神から1キロほど。玄界灘を望み「長浜鮮魚市場」を抱える福岡市中央区長浜は、西日本一円から新鮮な魚介類が集まる博多の台所だ。同時に、とんこつスープに極細麺の「長浜ラーメン」を生んだ屋台街でも知られる。

鮮魚市場前で営業する長浜地区の屋台(福岡市中央区)

鮮魚市場前で営業する長浜地区の屋台(福岡市中央区)

鮮魚市場が長浜に整備されたのは1955年。夜から朝にかけて市場で働く人たちを当て込み、周辺に屋台が出るようになったという。

忙しい市場関係者向けに、ラーメンはゆで時間の短い極細麺が使われた。さらに、のびないうちに食べ終えて麺だけお替わりできるようにしたのが、今では福岡以外にも広まった「替え玉」だ。替え玉のできる長浜ラーメンは観光客らの人気も博し、昭和から平成にかけて長浜には多くの屋台が軒を連ねた。

屋台「若大将」の澤野繁春さん(67)は「有名人の来客も多く大にぎわいだった」と振り返る。お相撲さんが来れば、歩道に丸イスを9つまとめて座ってもらった。売れないバンドには「出世払いでいい」と替え玉を出した。お客が途切れず、朝9時まで店を開けたことも。5軒の屋台を同時に切り盛りしたピーク時には売り上げが年2億円を超えた。

だが近隣にタワーマンションなどが増え、酔客の大声や悪臭、歩道占拠といった問題に住民の反発が強まると、市は2013年に「屋台基本条例」を制定、営業時間や歩道幅の規制強化に乗り出す。規制に適合できず廃業を選ぶ店も出て、15軒あった長浜の屋台は4軒にまで減った。

アジアに近い福岡は訪日客が多く、歓楽街で交通の便も良い中洲地区などの屋台は近年、外国人でにぎわう。一方、長浜地区は市中心部からやや離れていることもあり、来客が「ひと晩3、4組どまり」(澤野さん)の日も多いという。

それでも今春、新規出店の公募で「長浜に屋台を出したい」と1軒が手を挙げ、久々に長浜に新顔が増える可能性が出てきた。「学生だったお客が何十年後に部長になって部下と来てくれる。隣に座った同士、見知らぬ人がすぐ仲良くなる。そんな良さをまだなくしたくない」と澤野さん。長浜の屋台の灯は今日もともり続けている。(山本有洋)

屋台の作法 出張や旅行の際に立ち寄る人も多い福岡の屋台。「ハードルが高そう」と敬遠する向きもあるが、難しいルールはない。常識的マナーで十分だ。
 席が限られるため混雑時は詰め合わせて座る。店外での立ち飲みは不可。料金の明示は条例で定められているが、お通し代がかかる店もあり、不安なら店主に確認する。
 人気店で近年、訪日客が長い行列をつくる光景もみられる。食べているときに後ろで誰かが待っている状態をある程度我慢する必要もありそうだ。

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