日常の気づき新商品生む、カルビー山辺昌太郎さん
(My Way)

2019/6/22 8:00
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今年で創業70年を迎えたカルビーが2016年秋、創業の地である広島に開いた「カルビーフューチャーラボ」。新商品の開発拠点でクリエーティブ・ディレクターを務める山辺昌太郎(49)に課されたミッションはいたってシンプルだ。「3年で3つのヒット商品をつくれ」。3年目を迎える今年、消費者目線にこだわった商品開発で、老舗菓子メーカーに新しい風を巻き起こそうとしている。

カルビーフューチャーラボ クリエーティブ・ディレクターの山辺昌太郎さん

カルビーフューチャーラボ クリエーティブ・ディレクターの山辺昌太郎さん

「一人暮らしだと魚料理が面倒くさい」「コーヒーはたばこに合う」――。開放的なオフィスの一角に、色とりどりの付箋が貼られている。付箋に書かれているのは、食生活や習慣に関する何気ないことだ。

カルビーフューチャーラボでは広島県内の大学生と協力し、これまで1700人を超える消費者を取材してきた。食に関することだけでなく、「なによりも娘が最優先」「職場では交流がほとんどない」など日常生活で感じることを「気づき」として共有してきた。2400枚を超える付箋が「新商品のコンセプトを生み出すヒントになる」。

広島で生まれ、広島市の修道高校から京都大学に進んだ。卒業後はリクルートに就職。医療や金融系の新規事業の立ち上げや転職雑誌の編集などに携わった。

リクルートで学んだのはスクラップ・アンド・ビルドの精神だ。新規事業としてローンの比較サイトを立ち上げたものの、半年で事業をたたむことを告げられた。当時の上司に「リセットボタンを押せる人であれ」と教わったことは今も大事にしている。物事を最初からやり直すことができる姿勢が、カルビーの江原信副社長の目に留まった。

広島に戻ったのは約30年ぶり。真っ先に感じたのは広島東洋カープへの熱量だった。物静かな人でも「カープ戦を見ると人が変わる」。応援することは人を元気にし、力を与えてくれることを「気づき」として付箋に書いた。

「応援」をキーワードに開発したのが、地域応援スナック「ふるシャカ」だ。さいころのように四角いジャガイモのフライに、のり塩味の粉末を振りかけ、容器を上下に振って混ぜる。容器には「カープ坊や」のデザインをあしらった。観戦中にシャカシャカと音を鳴らすのが醍醐味。全国への横展開も進めており、19年3月からは東北楽天ゴールデンイーグルス仕様のふるシャカを販売している。

ヒット商品の開発も大事だが、「ヒット商品が出来上がる仕組みそのものをつくり上げたい」。フューチャーラボの開設から3年を迎える今年、ふるシャカに次ぐ新たな商品の発信に向けた準備を進める。「ゼロから1をつくるのはしんどいが、それだけ面白い」。無数の付箋をじっくり眺める山辺はどこか楽しげだ。

=敬称略

(田口翔一朗)

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