フーターズの運営会社破綻 「約束事」に縛られ迷走
日経ビジネス

コラム(ビジネス)
2019/6/25 4:30
保存
共有
印刷
その他

日経ビジネス電子版

レッドオーシャンに挑む、新領域を拓(ひら)く――。新規事業に挑む企業が放つ言葉は華やかだ。だが、新しいことに取り組んだ結果、本業がおろそかになったり、顧客離れが起きたりするケースは少なくない。その一つが人気飲食店「HOOTERS(フーターズ)」を日本で展開していたエッチジェー(東京・新宿)だ。同社は2019年3月、東京地裁に民事再生法の適用を申請した。

運営会社が経営破綻した「HOOTERS(フーターズ)」の銀座店。「急ぎ、焦り、縛られすぎた」と関係者は語る

運営会社が経営破綻した「HOOTERS(フーターズ)」の銀座店。「急ぎ、焦り、縛られすぎた」と関係者は語る

「急ぎすぎたから」「焦りすぎたから」「縛られすぎたから」……。破綻までの経緯を知る関係者はこぞって、新規出店という形で新しいことを急ぎすぎ、焦りすぎていた同社の実態を口にする。

エッチジェーが、フーターズの日本国内1号店を東京・赤坂にオープンさせたのは10年。チアリーダーをイメージした「フーターズ・ガール」の接客、オレンジ色を基調とした明るい内装、看板メニューのチキン・ウイングなどが起爆剤となって、たちまち人気店となった。

■毎年1店舗ずつ出店、売上高は一時3倍近くに

出店ペースは速く、銀座(12年)、大阪(13年)、渋谷(14年)、新宿(15年)、名古屋(16年)と毎年1店舗ずつ拡大。帝国データバンクなどによると、11年9月期に6億円程度だった売上高は、最盛期の16年9月期には17億円と、3倍近くに膨らんでいる。

ところが風向きが一変した。経営破綻にまで追い込まれた背景として、ある関係者が強調するのは「縛られすぎ」の部分だ。米国の本家・フーターズ側との間で交わしたフランチャイズ契約上の「約束事」の存在があった。

詳細な文言は不明だが、その約束事とは、一定の期間内に日本国内で出店しない限り、何らかのペナルティーが科されたり、出店エリアが狭まったりする内容だった。エッチジェーはこの約束事を意識しすぎ、「いったん踏みとどまることができなかった」(関係者)という。

西日本最大の歓楽街、中洲エリア。フーターズは1年余りで福岡店の撤退を迫られた(写真=アフロ)

西日本最大の歓楽街、中洲エリア。フーターズは1年余りで福岡店の撤退を迫られた(写真=アフロ)

事実、16年の名古屋店に続き、毎年1店ずつの新規出店のルールに縛られるかのように、17年には福岡店をオープンさせた。西日本最大の歓楽街である福岡・中洲エリアに店を構えたものの、周辺の飲食店の賃金相場を勘案しなかった。明らかに低い時給で従業員を確保しようとしたため、フーターズ・ガールの確保さえままならなかった。無理な出店が社員教育の不十分さやサービス低下につながっていった点は否めない。福岡店がわずか1年2カ月での閉店を迫られたことで、金融機関向けを中心とした負債が一気に膨らみ、破綻の引き金になった。

一連の民事再生の手続きを経てこのほど、外食事業を展開する豊田産業(愛知県刈谷市)グループがフーターズの新たな運営会社になっている。店舗の営業は続けており、従業員の雇用も原則維持。見かけ上は何も変わっていない。

豊田産業グループがフーターズの受け皿会社になった。ハイペースでの出店は念頭にないという。(写真=AP/アフロ)

豊田産業グループがフーターズの受け皿会社になった。ハイペースでの出店は念頭にないという。(写真=AP/アフロ)

豊田産業の西堂洋一執行役員事業部長は、これまでの経緯を踏まえ「まずは既存店の黒字化のためにフーターズの魅力を再発掘していく作業から始めたい」と話す。

もちろん、これまでエッチジェーがやってきたようなハイペースでの出店は、念頭にないという。エッチジェーが苦しんだ約束事についても「経営上の足かせにならないようにする」とし、新規出店の際にはその都度、米社側と丁寧な協議をしていく考えだ。

勇敢に攻めることだけが正しいとは限らない。新しい領域に踏み出し続けることが正解とは限らない。10年足らずの間に起きたフーターズの栄枯盛衰は、新規事業を展開するにあたってそんな「教訓」を残したといえる。

(日経ビジネス 山田宏逸、白井咲貴)

[日経ビジネス電子版 2019年6月24日の記事を再構成]

日経ビジネスの6月24日号特集「新規事業という病」では、新しいことが「目的」になってしまった会社の迷走パターンをまとめた。

日経ビジネス電子版セット

週刊経済誌「日経ビジネス」の記事がスマートフォン、タブレット、パソコンで利用できます。雑誌発行日の前週の水曜日から順次記事を公開。日経電子版とセットで月額650円OFFです。

保存
共有
印刷
その他

日経BPの関連記事

電子版トップ



[PR]