米Slack創業者、日本事業拡大に意欲 時価総額2兆円
【ニューヨーク=宮本岳則、シリコンバレー=佐藤浩実】ビジネス対話アプリの米スラック(Slack)・テクノロジーズが20日、米ニューヨーク証券取引所に上場した。初値は38.5ドルとなり、取引所が事前に示す参考価格(26ドル)を48%上回った。高い成長期待から時価総額は約195億ドル(約2兆円)に達した。日本経済新聞の取材に応じた共同創業者のカル・ヘンダーソン氏は上場を機に「日本など米国外で事業を拡大したい」と述べた。

2009年創業のスラックはビジネスに特化した対話アプリを提供している。創業者らが社内交流用に作ったのが始まりだったが、外部公開を機に世界で1000万人強が利用するサービスに育った。基本機能は無料で使える「フリーミアム」の事業モデルだが、年中無休のサポートなどが付く有料契約数も約8万8000件にのぼる。最高技術責任者を務めるヘンダーソン氏は「企業向けソフトを(実際に使う)消費者の視点で作ったことで、多くの人に受け入れられた」と話す。
同社は未上場ながら、推定時価総額が10億ドルを超える「ユニコーン」の代表格だった。今回の新規上場では新株の発行や売り出しによる資金調達はせず、既存の株式を取引所に登録する「ダイレクトリスティング(直接上場)」と呼ばれる手法をとった。ソフトバンクグループのハイテク投資ファンド「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」が約7%出資し、大株主の1社に名を連ねる。スラックのヘンダーソン氏はソフトバンクについて「日本市場を開拓する上で重要なパートナー」と述べた。日本は米国に次ぐ、2番目に利用者が多い市場になっているという。
課題は収益性だ。19年2~4月期の売上高は1億3482万ドル(約145億円)と前年同期に比べて1.6倍に増えたが、最終損益は3188万ドルの赤字となった。有料契約の拡大がカギを握るが、米マイクロソフトが大企業中心の顧客基盤を生かし、対話ソフト「チームズ」を提供するなど、競争も激しい。上場後も黒字化の道筋がみえない場合、株価の上値は重くなりそうだ。
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