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ハラスメント禁止条約、初の国際ルール、ILO総会

【ジュネーブ=細川倫太郎】国際労働機関(ILO)は20日、職場での暴力やハラスメントを全面的に禁止する初の国際条約を採択した。従業員や就職活動中の学生など幅広い関係者へのセクシュアル・ハラスメント(セクハラ)や嫌がらせを禁じ、政府や雇用主に対策を講じるよう求めた。性的被害を告発する「#Me Too」運動などが世界で広がる中、法的拘束力のある条約でハラスメント撲滅を目指す。

スイス・ジュネーブで開催しているILOの年次総会の委員会で採択した。21日の最終日の本会議でも採択し、正式に成立する見通しだ。

条約では暴力やハラスメントを「身体的、心理的、性的、経済的被害を引き起こしかねない行為」などと定義し、これらの行為を法的に禁止する。保護されるべき対象は従業員やインターン実習生、ボランティアなど幅広く含んだ。職場や出張先だけでなく、通勤途中やSNS(交流サイト)などでのコミュニケーションでも適用する。

雇用主には被害防止へ職場で適切な措置を取るように、政府には法律の施行や被害者の救済支援を求めた。内部通報者らが報復を受けることのないような防止策も必要とした。暴力やハラスメントが発生した場合は必要に応じて「制裁を設ける」とも明記した。

条約を批准するかどうかは各国の判断に委ねられ、国会などで審議する。原則、条約は2カ国が批准してから1年後に発効する。批准する国は条約に沿った国内法の整備などが必要で、加盟国はILOに国内の運用状況を定期的に報告する義務がある。

今回の総会では各国の首脳も参加し、条約の必要性を訴えた。フランスのマクロン大統領は演説で「働く人を守るための法律が必要で、すばらしい内容だ」と述べた。

日本では5月に職場でのパワーハラスメント(パワハラ)防止を義務付ける関連法が成立した。上下関係を背景としたパワハラは許されないと明記した。だが、行為そのものの禁止や罰則は盛り込まず、企業に相談窓口の設置などの防止策を義務付けるにとどまる。職場内での取り組みが中心で、就職活動中の学生など従業員以外への対応も明確ではない。

セクハラ、妊娠や出産をめぐる嫌がらせのマタニティーハラスメント(マタハラ)は既に企業に防止策が義務付けられている。ただ、これらも禁止規定はなく、実効性への疑問の声も多い。

今回のILOの条約とのかい離は大きく、日本が批准するにはさらなる法改正が求められる。法律で禁じると訴訟リスクが高まるため経済界は慎重で、批准には時間がかかる可能性がある。

ILOは労働に関する国際基準を作る国連機関で、187カ国が加盟している。児童労働の禁止などこれまでに189の条約が制定され、日本の批准数は49にとどまる。

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