イラン、米国の無人偵察機を撃墜 対立激化の恐れも - 日本経済新聞
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イラン、米国の無人偵察機を撃墜 対立激化の恐れも

(更新)

【ドバイ=岐部秀光】イラン国営通信によると、イラン革命防衛隊は20日、南部ホルムズガン州に侵入してきた米国の無人偵察機を撃墜したと発表した。米軍報道官は、ホルムズ海峡上空の国際空域で米軍無人機が地対空ミサイルによって撃墜されたことは認めたが、領空侵犯はしていないと反発した。米国によるイラン制裁やタンカー攻撃をめぐり、両国の対立が深まっている。今後さらに事態がエスカレートする可能性がある。

トランプ米大統領は同日、ツイッターに「イランはとても大きな過ちを犯した!」と投稿した。

一方、革命防衛隊のサラミ司令官は「米国に明確なメッセージを(撃墜によって)伝えた」と述べた。イラン外務省は「違法な挑発行為だ」と、米国を批判した。

20日の米原油先物市場で原油相場が大幅上昇した。指標となるWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)期近物は午前11時すぎ(日本時間21日午前0時すぎ)に1バレル57ドル近辺と前日終値より3ドル強上昇した。

イランが指摘する現場は首都テヘランから1200キロメートルの距離に位置する。革命防衛隊は撃墜したのは無人機「RQ-4グローバルホーク」と主張したが、米側は海軍の無人機「MQ-4Cトライトン」だと指摘した。

ホルムズ海峡近くでは6月13日、日本の海運会社が運航するタンカーなど2隻が攻撃を受けて炎上する事件が発生した。これを受け、米軍は同海域でのパトロールや警戒を強化していたとみられる。イランは領空侵犯には断固対応すると警告していた。米はタンカー攻撃にイランが関与したと指摘したが、イラン側は否定している。

米トランプ政権は5月上旬、それまで日本など一部にみとめていたイラン産原油の購入を全面禁止にするなど対イラン制裁の一段の強化に踏み切った。イランは反発し、原油輸出や金融決済で米制裁を回避する方策を欧州連合(EU)などが7月上旬までに示さなければ、イラン核合意の義務履行を部分的に停止すると主張した。

安倍晋三首相は6月、米イランの緊張をやわらげるため、テヘラン入りしたが、双方の挑発はむしろエスカレートした。米側は中東への1000人の増派を表明し圧力を強めた。

一方、イランが支援するイエメンの反体制武装勢力フーシによるサウジ本土への攻撃が激化した。フーシは19日、サウジ南部ジザン州の都市にある発電所をミサイルで攻撃したと明らかにした。イエメンでは今月、米軍の無人機1機がフーシによって撃墜された。

「衝突コース」に乗ったかにみえる米イランの対立が深刻なのは、両者に対話のルートがほとんど存在しないためだ。米中や米ロに、さまざまなレベルで意思疎通の窓口があるのと対照的に、40年間にわたり断交を続けている両国の間には相互不信ばかりが積もっている。

オバマ政権時代までかろうじてあった非公式の連絡ルートが、トランプ政権で機能しているかどうかは不透明だ。衝突を避けるための安全装置が働かなければ、関係するプレーヤーによる計算間違いや過剰反応が、本格的な軍事衝突につながりかねない。

米国とイランは1979年のイスラム革命と、その後にテヘランで発生した米大使館占拠事件で対立した。革命前までイランは米国にとって中東で最重要の同盟国のひとつだった。

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