2019年7月17日(水)

イタリア「第2の通貨」構想 財政難で奇策
事実上の通貨発行にEUは懸念

ヨーロッパ
2019/6/19 18:18
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コンテ首相(中)を支える同盟のサルビーニ副首相(右)と五つ星運動のディマイオ副首相は少額債券発行に前向きな姿勢を示す=ロイター

コンテ首相(中)を支える同盟のサルビーニ副首相(右)と五つ星運動のディマイオ副首相は少額債券発行に前向きな姿勢を示す=ロイター

【ブリュッセル=竹内康雄】イタリアでユーロに次ぐ事実上の「第2の通貨」を発行する構想が浮上している。財政難にあえぐ伊政府が少額債券を発行し、民間企業への未払い金や市民への税還付などにあてる案だ。市中で流通すれば事実上の通貨とみなされ、欧州連合(EU)のルールに反する可能性が高い。イタリアが財政ルールを逸脱しているとして制裁を検討中のEUはユーロの信頼を傷つけかねない事態に懸念を強めている。

この構想はコンテ政権を支える極右「同盟」の発案で「ミニBOT」と呼ばれる。伊政府が発行する短期財務証券「BOT」のミニチュア版のイメージだ。構想段階のため詳細は不明だが、欧州紙によると、満期はなく利子はない。1~500ユーロの少額債券を発行し、企業や市民に流通した後は納税や決済にも使えるとされ、通貨に近い。

この案が浮上した背景には伊財政の悪化がある。政府と取引のある伊企業には政府からの支払いが滞っているとの不満がたまる。同盟を率いるサルビーニ副首相は18日「民間企業に支払う手段がほかにあれば検討するが、なければこの計画を推進する」と語った。

だが紙幣の形で発行すれば通貨とみなされるため、ユーロ採用国に他の通貨の発行を禁じるEU規定に違反する。欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁はミニBOTが事実上の通貨であることから違法との認識を示す。

ECBが発行するユーロと伊政府が発行するミニBOTの2種類の通貨が市中に出回るとどうなるか。企業や市民は信用力の高い通貨を持とうと銀行からユーロを引き出す。信用力の低いミニBOTは受け取りを拒否されるか、割引された価格で流通する。ユーロ不足が国全体に広がり、政府もユーロ建ての債券を償還できずに債務不履行に陥る。この結果「将来のユーロ離脱につながる」(欧州系金融関係者)と懸念されている。

伊政府内からは「新たな債務になる」(トリア経済・財務相)、「政府で議論していない」(コンテ首相)と異論が出ている。ミニBOTの発行には法整備などが必要で、すぐに実現するとの見方は多くない。ただコンテ政権を支える与党の同盟に加え、左派「五つ星運動」はEU懐疑派であることから、将来的に実現しかねないと危惧する見方も増えつつある。

EUルールを尊重しない伊政権の姿勢にEU側は疑念を募らす。ただでさえイタリアの財政状況は深刻だ。公的債務は国内総生産(GDP)比で132%で基準の60%を大きく上回る。EUの欧州委員会は5日、EU財政ルールに基づく制裁手続き入りが「正当化される」との報告書を公表。EU各国は7月に制裁手続きに入るかどうか判断する。

EU側はユーロ圏3位の大国との対立激化は望んでいない。EUで財政を担うモスコビシ欧州委員は「対話を続けたい」と述べ、伊政権の歩み寄りがあれば、制裁手続き入りは回避できるとの考えを示す。だが、政権内で力を持つサルビーニ氏の態度が軟化する兆しはみえない。

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