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人間関係の葛藤、10代で経験 人の総合力鍛える

高校に入学した時、ある教師が「将来満足のいく人生にしたいなら、部活などせず3年間は勉学に打ち込み一流大学に入るべきだ」と述べたことがあった。通っていたのが地方の進学校だったため「そういうものかな」と思いつつも何となく違和感を覚えた。

中学時代に陸上長距離の県大会で2位に入ったことがあり、夢を抱いて高校でも陸上部に入部したけれど、3年間ずっとこの教師の言葉が心にひっかかっていた。腰のけがで練習をまともにできず不本意な3年間を送ることになり、先生の言った通り、陸上も勉学も中途半端だったせいだろう。希望の大学に入るまでに卒業後も長い歳月を費やしてしまうことにもなった。

最近、ある教育学者から「コミュニケーション能力やリーダーシップの力は高校生くらいでほぼ決まり、その後の人生で大きくは変わらない能力である」ということを聞いた。

振り返れば、私たちの高校のチームは駅伝の県優勝校のみが出場できる全国高校駅伝を目指していた。メンバーがこの目標に向かって進む過程で、人間関係は時にもつれた。それをどう打開し、モチベーションを高く維持するかおのおのが悩んだ。スポーツの世界では大半の人たちが負けるわけで、私たちも結果的には目標を達成できなかった。が、その過程で人の気持ちをおもんばかり、自分の意見を仲間に理解してもらうにはどのように振る舞う必要があるかを日々、試行錯誤していたと思う。

先の教師の言葉に話を戻すと、あれはこれまでの社会の常識の延長線上にいる限りはよかったかもしれないが、今後到来する社会の激変、特に人工知能(AI)優勢の時代では通用しないのではないだろうか、とさえ思えてくる。

多くの仕事は機械に取って代わられ、その機械を相手にする上では専門的で高度な知識を身につける必要はあるだろう。ただそれ以上にAI時代においては、コミュニケーション力やリーダーシップなど人間同士をつなぐ魅力を兼ね備えた人材が地球規模で社会を束ねていく。

そうした時代を生きることになるいまの若者は10代のうちに何をすればよいだろう。やはり人間関係の葛藤を経験しておきたい。何も勉学をおろそかにしてもよいとは思わないが、スポーツ、文化部といった部活動に限らず、例えば地域のボランティア活動を主体的に運営したり、友人同士で起業したりと、現代の若者が学校の枠を超えて主体的に活動できる場は多様で幅広い。多感な10代のうちに単なる仲良しグループでは経験できない抜き差しならぬ状況に置かれてこそ、人間の総合力を磨き鍛えるよい体験となるに違いない。

ところで高校時代ともに戦ったわが駅伝のメンバーは全員が大学受験で浪人したもののその後各方面で活躍している。面白いことに合宿の夜に語り合った将来の夢を、私以外はのちの人生で社会の荒波を乗り越えて立派にかなえている。当時私は新聞記者になりたかった。新聞にこのような連載の場をいただき、ちょっとだけ夢をかなえたのも何かの縁だろうか。

(プロトレイルランナー)

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