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認知症対策「共生と予防」を柱に 政府、新大綱を決定

政府は18日、認知症対策を強化するため、2025年までの施策を盛り込んだ新たな大綱を関係閣僚会議で決定した。発症や進行を遅らせることを「予防」と定義し、認知症の人が暮らしやすい社会を目指す「共生」とともに2本柱の一つとして初めて目標に掲げた。成年後見制度の利用を促進するため全市区町村に調整機関を新設することなども盛り込んだ。

安倍晋三首相は同日午前に開かれた関係閣僚会議で、「共生と予防を車の両輪として取り組みを強力に推進していく。誰もがいくつになっても活躍できる生涯現役社会の実現に向けて全力を尽くしてください」と指示した。政府は認知症の人と家族の視点を重視しながら、増大する社会的コストの抑制も目指す。

団塊の世代がすべて75歳以上となる25年には、認知症の人は約730万人に達し、高齢者の5人に1人となる見込み。5月の素案では「70代で認知症の人の割合を10年間で1割減らす」という数値目標を掲げた。だが「発症した人が責められる」など懸念が噴出したため取り下げ、「参考値」に格下げした。

大綱では、認知症を「誰もがなりうる」として、予防については「認知症にならない」ではなく「認知症になるのを遅らせる」「認知症になっても進行を緩やかにする」と定義。今後、認知症の発症や進行の仕組みを解明するため科学的な証拠を収集し、予防・診断・治療法の研究開発を進める。

認知症を巡っては、(1)運動不足の改善(2)糖尿病や高血圧など生活習慣病の予防(3)社会参加による社会的孤立の解消や役割の保持――などが予防に役立つ可能性を示唆されている。

大綱は高齢者が集える公民館などの「通いの場」の拡充を重要政策の一つに位置付けた。65歳以上の高齢者の参加率を4.9%(17年度)から8%程度に増やすことを盛り込んだ。これまでも交付金などで整備してきたが低迷しているため、市区町村向けに国が手引を作成するなど普及を促す。

政府が15年に策定した「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」では認知症の人との共生を掲げ、当事者や家族、地域住民が交流する場の「認知症カフェ」などの普及につながった。後継となる大綱は、5月の素案では「予防と共生」の順番だったが、予防の数値目標に対する批判を受けて「共生と予防」に入れ替えた。

共生のために認知症の人本人からの発信の機会も増やす。「認知症本人大使」を創設するなどし、地域で暮らす当事者とともに認知症の啓発に力を入れる。

さらに共生を広げる新たな施策として、鉄道やバスなど一定の規模以上の公共交通事業者に対し、認知症の人を含む高齢者などへの対応や研修のあり方を含む計画の作成と取り組み状況の報告・公表を義務付ける。

安全運転の支援システムを搭載した自動車に限定して高齢者の運転を認める新制度の検討も進んでおり、大綱では年度内に同制度の方向性を決めると記載した。

成年後見制度の利用を促進するために、21年度までに、家庭裁判所など関係機関同士の調整役を担う「中核機関」を全市区町村に新設する。18年10月時点で全体の4.5%の79自治体にとどまっており、来年度の予算編成で中核機関の設置を支援する具体策を盛り込む。

素案に入っていた「(高齢者の)保有資産の活用のための準備」という文言は削除された。文言は金融庁が作成した「老後の金融資産に2千万円必要」との報告書が基になっていた。報告書が国会論争の結果、事実上の撤回に追い込まれたことを受けて修正した。

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