スポーツ選手の移籍制限、「独禁法違反の恐れ」
公正取引委員会は17日、スポーツ選手の移籍制限について、無期限に制限・制約するルールは独占禁止法違反の恐れがあるとの考え方を明らかにした。所属チームの承諾がないまま移籍した選手について、無期限に出場禁止とするルールなどが該当する。今後は各スポーツ界で自主的な改善を求める。
関係者によると、一部の競技でこうしたルールが存在したという。
公取委は昨年末から、スポーツ選手の移籍制限ルールに関する情報提供を選手などに呼び掛けていた。今回は調査結果を踏まえて、独禁法違反の恐れがあると判断される行為の線引きを示した。
例えば実業団の場合、スポーツ事業は企業にとって広告・宣伝の効果があるとして「経済活動にあたる」と指摘した。その上で、移籍制限によって競争が制限される場合や、選手の獲得ができず新規参入が阻まれる場合には、独禁法違反の可能性があるとした。
移籍制限ルール自体は、選手育成に要した費用の回収や、資金力があるチームに有力選手が集まりすぎるのを防ぐ目的がある。公取委は同ルールについて「競争を促進する効果をもつ場合もある」と理解を示した一方で、「移籍や転職を無期限に制限・制約するルールは独禁法違反とみられる」と指摘した。
問題があるルールとして、移籍を一切禁止するものや、現所属チームの了承がない限り移籍を無期限に認めないもの、移籍は可能でも試合出場を無期限に認めないものなどを例にあげた。
人材獲得をめぐっては昨年2月、個人で仕事を引き受けるフリーランス人材との企業の商習慣について有識者検討会の報告書を公表した。引き抜き合いを防止するなど、過剰な人材の囲い込みは独禁法違反の恐れがあるとした。今回は公取委として初めて、企業などの人材獲得分野に関する見解を示した。