南都銀、中間持ち株体制に 子会社統括で稼ぐ力増強

南都銀行が17日、複数の事業を統括する中間持ち株会社体制に移行すると発表した。地銀は金融関連だけでなくリース、顧客企業の情報化支援まで業務は幅広い。各事業を一元的に管理することで、中小企業や個人への提案力を高め、グループ全体の収益力向上を目指す。少子高齢化や人口減を背景に経営環境が悪化する中、地銀が生き残り、地域経済再生の原動力になれるかが問われる。

橋本隆史頭取は17日の記者会見で「これまでの子会社は組織運営で甘さがあった。本体ともども関連会社も改革し、企業価値の向上に取り組む」と狙いを説明した。
南都銀の子会社は12社あり、3月に地場証券を完全子会社化した「南都まほろば証券」が最も新しい。ほかに投資顧問、クレジット関連など本体業務との親和性が高い金融サービスのほか、IT(情報技術)化や設備リースなど企業に向けた支援業務がある。さらに銀行本体の管理業務を担う会社もある。
現在は本体の経営企画部が子会社の管理を担うが、統括力や子会社間の相乗効果の創出には限界がある。数値目標などは「検討中」(石田諭専務執行役員)だが、より業績に対する責任が明確になる中間持ち株会社を設立することで、グループ全体として事業をハンドリングしコスト削減と収益力のアップを目指す。
中間持ち株会社は一部社屋の管理を行っていた「南都地所」に、本体が保有していた別の9社の株式を約54億円で承継させ、金融庁の認可後の9月に「南都マネジメントサービス」とする形で設立。企画部門が長く、現在はリース子会社の社長を務める松岡弘樹氏を社長に充てた。事務やシステムの共通化によるコスト削減や、顧客向けサービスのワンストップ化に取り組むという。
南都銀は証券参入のほか、2017年4月には信託業務に参入。金融庁は段階的に銀行の業務範囲の規制緩和を進めており、中間持ち株会社を新事業の受け皿とする狙いもある。20年度からの新中計策定に向けて、グループ全体として「稼ぐ力」の増強を急ぎたい考えだ。
7月には9社のうちの1社の業務を拡大し、「南都コンサルティング」に商号変更する。中小企業など取引先の経営戦略立案支援やビジネスマッチング、人材紹介などを手掛ける予定で、社長に経営共創基盤の船木隆一郎氏を招いた。今月下旬の株主総会後に副頭取に就任する予定の石田氏も経営共創基盤に在籍したことがある。
地銀の苦境は直接的には長期化するゼロ金利政策に起因するが、背景には地方で加速する少子高齢化や人口減がある。奈良県は北部が大阪のベッドタウンとして発展したため高齢化の波が一気に押し寄せ、山間部は深刻な人口減に直面。県外就業率や県外消費の割合も高いままだ。南都銀は3年間で店舗と人員を2割削減する方針も表明している。コスト削減を進めつつ、地域経済の活性化をどう担うかが試される。
高コスト体質が課題 店舗や人員減、競争激化
「収益の最大化を目指す」。17日に奈良市内で記者会見した南都銀行の橋本隆史頭取は中間持ち株会社設立の狙いなどを説明した。
アベノミクスが始まってから関西の地銀の稼ぐ力は大幅に低下している。奈良県で圧倒的なシェアを持つ南都銀行も例外ではない。2019年3月期の単体ベースの実質業務純益は前の期のほぼ半分の56億円に減った。
課題は高コスト体質。低金利に対応したコスト削減が不十分で、19年3月期の行員1人当たりの実質業務純益は222万円。アベノミクス開始前の12年3月期と比べて6割近く減少し、隣接する和歌山県地盤の紀陽銀行の半分以下だ。
店舗や人員を削減して生き残りを目指すが、他の地銀も構造改革を急いでおり、競争は一段と激化する可能性がある。
関西みらいフィナンシャルグループは店舗の一部を個人営業の特化型に切り替え、営業担当も増員しする。池田泉州銀行は20年度までに有人店舗を21店減らす方針を打ち出した。滋賀銀行は千葉銀行などの広域連携「TSUBASAアライアンス」に参加すると発表している。南都銀行の橋本頭取は「単独で生き残れると思っている」と語ったが、先行きは不透明だ。関西で地銀の再編機運が再び高まる可能性もある。(岡田直子、露口一郎)