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行動経済学で考える「非合理な投資」(投信観測所)

2019/6/25 12:00
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「ギャンブルで勝ったお金は働いて得たお金より簡単に使ってしまう」。行動経済学で証明された事例の一つだ。これは、人の非合理的な投資行動に基づく結果だという。このような行動は従来の「伝統的な経済学」では説明がつかず、20世紀後半になって誕生した「行動経済学」で説明が可能になった。人の非合理な投資行動について、行動経済学に詳しい野村証券金融工学研究センターの大庭昭彦氏に話を聞いた。

■心理学と経済学を融合した行動経済学

野村証券金融工学研究センターの大庭昭彦氏

野村証券金融工学研究センターの大庭昭彦氏

行動経済学は、心理学の理論を応用して人々の経済活動を分析する学問だ。従来の伝統的な経済学では人は常に合理的な行動をとると仮定した。一方、行動経済学は、人は必ずしも合理的な行動をとらない、時として非合理的だとしている。近年になって研究が進み、2002年にダニエル・カーネマン氏、13年にロバート・シラー氏、17年にリチャード・セイラー氏と、いずれも米国の経済学者が行動経済学の分野でノーベル経済学賞を受賞した。日本の学術分野ではあまり浸透していないが、米国や英国では政府が経済政策にも活用するほど注目されている。米グーグルなど多くの一般企業でも、行動経済学専門のデータサイエンティストがいる。ロバート・シラー氏がテレビ出演で不動産バブルを予測したことで、一般への認知度が高まった。

■相場下落時は「血の通った人間のサポート」が重要

行動経済学の一分野として、金融市場の活動に焦点をあてた「行動ファイナンス」がある。例えば、米国では「対面営業が人工知能(AI)に取って代わられることはない」と、行動ファイナンスの研究から実証されている。資産運用で顧客が損をした場合、対面(人間)よりAIのほうが解約されるケースが多いという米国のデータがある。このデータが示すのは、リスクを伴う資産運用は、「血の通った人間のサポート」が必要ということだ。相場が上下に動くなかでは投資家とコミュニケーションをとり、顧客の気持ちを安定させて、長期保有につなげること。それは、人間しかできない。

人が合理的な行動をとることを前提とした伝統的な経済学は理論上の話。人間ではなく、合理的に動くロボットを対象にしたような架空の世界だ。実際に経済を動かしている人間の行動は合理的ではない。人は「リスクに見合ったリターン」というものをきちんと考えずに「損を一切しないでリターンを得たい」などと思いがちだ。

■「もうかる喜び」より「損する苦痛」のほうがはるかに大きい

行動ファイナンスの中心的な理論であるプロスペクト理論の基となる考え(関数)は確率加重関数と価値関数の2つだ。

プロスペクト理論の説明でよく使われる表現として、人の投資行動において「利益はなるべく早く確実なものにしたい、損失は先送りしたい」という傾向が挙げられる。

確率加重関数は簡単にいうと、人間の感じる主観的な確率と、実際の確率が全く異なるということ。例えば、「宝くじの1等(当選確率は1/1000万)は当たる可能性は極めて低いが、人は当たりそうだと思って購入する」や「車の運転は平気なのに、それよりはるかに確率の低い飛行機の事故を心配する」などだ。

価値関数は端的にいうと「人は『もうかる喜び』より『損する苦痛』のほうがはるかに大きい」ということを示している。

■非合理バイアスを認識して効率的な資産運用に

このように人の行動は必ずしも合理的ではないことが証明されている。代表的な非合理バイアス(偏り)と関連する投資行動は以下の通り。

(1)「自信過剰」:自分の運用能力に自信を持ちすぎる。その結果、過剰に取引して損をしてしまう。

(2)「後悔回避」:後悔するのが嫌で、損切りできない。

(3)「損失回避」:利益と損失では同じ金額でも損失の方が大きく感じる。過剰に保険をかけたくなる理由の1つ。

(4)「メンタルアカウント」:お金に色を付けてみてしまう。例えば、ギャンブルで勝ったお金は働いて得たお金より簡単に使ってしまう。

(5)「主観確率」:めったに起こらないことをもっと起こると思ってしまう。宝くじを買いたくなる理由の1つ。

(6)「決定麻痺(まひ)」:銘柄の選択などの際に、多すぎる情報を与えられるとかえって決定できなくなってしまう。

行動ファイナンスの研究結果で有名な事例で「資産運用の成績が良いのは男性より女性」というのは、男性は「自信過剰」バイアスが強い傾向があるからだ。男性は1回もうかった経験をすると、自分は能力があると自信過剰になり、頻繁に売買をして損をする人が多い。

資産運用では、これらのバイアスが存在することを認識し、感情に基づく短期的で非合理な投資行動を抑制することが、効率よくお金をためることにつながる。投資家自身はもちろん、金融機関で投資家に投資アドバイスする側の人も、これらのバイアスなど行動ファイナンスを意識した合理的な判断が大事だ。加えて、不安定なマーケットのなか、投資アドバイザーは投資家へ合理的な判断を促す「血の通ったサポート」をすることが重要な役割である。

大庭昭彦氏
野村証券金融工学研究センター クオンツ・ソリューション・リサーチ部エグゼクティブディレクター。著書に「行動ファイナンスで読み解く 投資の科学―"お金は感情で動く"は本当か―」(東洋経済新報社)。

(QUICK資産運用研究所 望月瑞希)

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