2019年9月16日(月)

ソニーに再び改革圧力 米ファンド、半導体分離要求

2019/6/14 21:00
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ソニーに対する投資家の視線が厳しさを増している。米ヘッジファンドのサード・ポイントがソニー株を再取得し、半導体事業の分離などを求めたことが13日わかった。復活を果たしたソニーだが、成長のけん引役がみえにくく、慢性的に赤字のスマートフォンの再建も道半ばだ。株価が低迷するなか、多くの事業を抱えるコングロマリット(複合企業)経営の是非が改めて問われそうだ。

「半導体を切り離し、"ソニーテクノロジーズ"として上場させるべきだ」。サード・ポイントは13日に公開した投資家向けの書簡で、半導体の分離・独立をソニーに提案したと明らかにした。

著名投資家のダニエル・ローブ氏が率いるサード・ポイントは13年にもソニー株の保有を公表し、一時は7%ほど保有していた。当時はエンターテインメント事業の分離を求めたが実現せず、14年にソニー株の売却を公表した。今回はソニー株を15億ドル(約1600億円)分保有していることを明らかにした。出資比率は数%とみられる。

サード・ポイントが目を付けたソニーの半導体は、世界シェア首位のスマホ向け画像センサーが主力だ。18年度の営業利益は1439億円と連結全体の15%を稼いだ。サード・ポイントは、半導体をソニーから独立させて上場させれば、5年以内に時価総額は350億ドル(約3兆7800億円)になると試算する。今のソニーの時価総額(約6兆9800億円)の5割強だ。

「高収益の半導体を切り離すのは現実的ではない」(ソニー株を保有する機関投資家)との声は多い。ソニーにとっても成長戦略の要で分離する選択肢は現時点でなさそうだ。それでもサード・ポイントが半導体の分離・独立を求めるのは、ソニーの株価が低いからだ。14日終値は5498円で18年9月の高値と比べ2割安い。株価が回復しないなら、半導体だけ別会社にして上場させた方が、投資家には投資の機会が広がるとみる。

提案は半導体の分離・独立にとどまらない。ソニーはゲームや音楽などエンタメに注力すべきだとして、金融子会社で東証1部のソニーフィナンシャルホールディングス(ソニーFH)や医療情報サービスのエムスリーなどの株式の売却を求めている。音楽配信のスポティファイ・テクノロジー株も対象だ。

ソニーはサード・ポイントの動きに対し、「提案は真摯に受け止め、建設的な対話を続ける」とコメントした。提案が伝わった14日の株式市場ではソニー株は終値で前日比3%上昇した。「サード・ポイントがソニー株を買い増すという思惑で上がった」(SMBC日興証券の太田千尋氏)

くしくもサード・ポイントの提案で改めて成長性を問われることになったソニー。複合企業として株価が振るわない象徴的な事業が、「エクスペリア」のブランドで展開するスマホだ。13年に当時の平井一夫社長が「世界3位を目指す」と述べたが、米アップルなどとの競争で足元のシェアは1%未満だ。慢性的な赤字が続き、10年間で累計の赤字額は5000億円規模。かつて10年で8000億円の赤字を出したテレビと似ている。

ソニーは20年度にスマホ事業の運営コストを17年度比で半分に減らし、黒字化を目指す。上海工場の閉鎖や欧州の営業機能の統合、東南アジアや南米からの撤退も決め、人員削減に踏み切った。

14日に国内で発売した新商品「エクスペリア1」は高画質の4Kテレビ「ブラビア」などの技術を応用した。動画再生などで良い画質を求めるユーザーを取り込む。映画のような動画を撮影できる機能などは一般的とは言えない部分もあるが、「万人受けする商品とは決別する」(スマホ子会社のソニーモバイルコミュニケーションズの岸田光哉社長)。高価格路線と構造改革で復活したテレビやデジタルカメラ事業の成功体験を追う。

ただ国内は携帯料金のルールが懸念材料だ。通信契約とセットで販売する端末の値引きを2万円までとするルールが導入される見通しで、高価格帯のスマホの買い控えにつながる可能性がある。「エクスペリア1」の国内価格は10万円程度。アップルの「iPhone(アイフォーン)XS Max」(約14万~18万円)より安いが、ソニーモバイルの岸田社長は「消費者の目は厳しくなる」と身構える。

今回のサード・ポイントの要求は実現するかどうか不透明だが、ソニーもゼロ回答ではいられないはずだ。13年にサード・ポイントと対峙した時はリストラで業績が回復。株価が上昇しサード・ポイントもうまく売り抜けたとみられる。

今回様相が違うのは、ソニーの業績が良いのに株価は上向かない点だ。今年度の連結営業利益は8100億円と過去2番目に高くなる見込みだが、次の成長をけん引する事業がみえない。

米マイクロソフトとゲームのクラウド配信サービスで提携するなど既存事業では対策を打っているが、「平井社長の時代と事業構造は変わっていない」(国内証券)。「現実的な選択肢として金融子会社であるソニーFHの再編(完全子会社化や売却)もありうる」(同)との見方があるなか、吉田憲一郎社長は難しいかじ取りを迫られそうだ。(岩戸寿、丸山大介)

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