2019年9月17日(火)

魚の本能 経験で超える ジャッカルのルアー(大津市)
匠と巧

関西タイムライン
2019/6/17 7:01
保存
共有
印刷
その他

スポーツフィッシングに欠かせないルアー(疑似餌)。ウロコに至るまでまるで本物の魚そっくりだったり、先端に金属製のプロペラがついていたり、光に当たってキラキラ輝いたり、その姿形は千差万別だ。釣り具メーカーのジャッカル(大津市)は釣果にこだわったルアーを開発し、初心者から上級者まで幅広い層から支持を得ている。

水の流れで泳いでいるように見えるルアー=目良友樹撮影

水の流れで泳いでいるように見えるルアー=目良友樹撮影

富山県の釣り具メーカーに勤めていた加藤誠司氏と小野俊郎氏が自分たちが使いたいものを作ろうと、1999年1月に琵琶湖の湖畔に立ち上げた。ルアーに関しては年間で約50種類の新商品を世に出している。

魚にとってルアーはどのように見えるのだろうか。バス釣り日本王者になったこともあるジャッカルの小野社長は「水に落ちた時の音や形態によって餌にもなり、または敵に、あるいはいらつく存在にもなり得る」と話す。

ルアーの重量が0.1グラム、長さが0.1ミリ違っても水中を落ちる速度は変わる。釣り糸を手繰った際の動きも変わる。微妙なさじ加減がものを言う。ではどのような形状が最適なのか。「こんな動かし方で魚が食いついた、逃げたなどこれまでの釣りの実戦経験から生まれる」(小野社長)

生粋の釣り人たちが集まったジャッカル。経験値を具現化して釣果に導く。ルアーはその匠(たくみ)の集大成でもある。

ルアー製造には最新の技術が発揮されている。日本では従来、ベテランの職人が手作りでルアーを作っていた。経験や感性が商品にふき込まれるが、2つとして同じものはできない。

一方、ジャッカルは創業時からCAD(コンピューターによる設計)を採用。経験の共有化を図った。2015年には3Dプリンターを導入。試作品は半日で削り出され、琵琶湖でテストをする。数回の改良を経て、量産化まで約1週間でできる体制を築いた。

スピードにこだわるのには訳がある。魚の旬だ。食べるだけでなく釣りにも旬がある。季節によって魚の行動が変わる。バスを例にとると、梅雨前は産卵期の特有の行動があるという。「経験値だが、この時期は赤い色に反応することが多い」(小野社長)と、赤色のルアーを準備する。

夏はブルーギルを食するのでそれに似せた色、秋はアユに似せたキラキラしたものにと変えていく。「早いときには2週間で行動が違ってくる」(同)。その旬のタイミングにあわせた商品を出さないと、釣り人から見向いてもらえない。間に合わなかったら、商機は1年先になる。だからスピードを重視する。

商品を世に出すときは「百点満点の出来」と小野社長は自負する。しかし敵もさる者。よく釣れると評判だったルアーもしばらくすると以前ほどには釣れなくなることがある。「魚の防御本能なのか、危険と察知して逃げる」(同)。だから次はその本能を超えるものを開発する。ルアー作りは人間と魚との終わりのない戦いの軌跡でもある。

(橋立敬生)

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]

日本経済新聞社の関連サイト

日経IDの関連サイト

日本経済新聞 関連情報

新しい日経電子版のお知らせ

より使いやすく、よりビジュアルに!日経電子版はデザインやページ構成を全面的に見直します。まず新たなトップページをご覧いただけます。

※もとの電子版にもすぐ戻れます。