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年金の2000万円不足問題(十字路)

今月公表された金融審議会の市場ワーキング・グループ報告書に奇妙な批判が集まっている。老後の毎月約5万円の収入不足を補うには約2000万円の貯蓄が必要という試算についてだ。

野党は「年金の100年安心は虚偽である」、与党は「試算に一般性がない」というが、高齢で無職の世帯の消費性向が100%以上であるのはもともとだ。高齢者の収入の柱が年金なのは当然だが、現役の時に蓄えた貯蓄を高齢期に取り崩して消費するのは正常な姿である。

給付の伸びを抑制する手段が導入されているからこそ、超高齢化の中でも公的年金は破綻しないという安心感がある。受給開始後の年金が現役の賃金上昇率ほどには増えない以上、それに備える必要があるのも明白だ。

家計調査によると、無職で65歳以上の夫婦世帯の公的年金受給額は平均で月額20万4000円(18年)。基本的な生活費だけでなく娯楽費なども含む消費支出の88%に相当する。世帯人員当たりの消費額は現役層より年金受給者の方が高い。年金の引き下げ余地こそあれ「引退した層のすべての生活費、高齢者が負担すべき税金・保険料まで政府が丸抱えすべし」との主張には無理がある。そんなことをすれば現役の保険料負担や消費税率は際限がなくなる。

だからこそ税制上優遇される少額投資非課税制度(NISA)や個人型確定拠出年金(イデコ)などが整備されてきた。政府が税収減というコストを払って、私的な資産形成を促すようになっている。

人々は労働と資本を提供することで豊かになってきた。所得をその時点ですべて消費してしまわずに、少額ずつでも投資や貯蓄に配分すれば生涯の消費を拡大できる。国民を豊かにするための政策論には「お金に働かせる」という発想が不可欠だ。

(大和総研 政策調査部長 鈴木 準)

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