日経2020イベント&ストーリー

フォローする

街のど真ん中にスポーツを 地域に活力生む「切り札」
第1回チャレンジニッポン スポーツ庁・鈴木長官ら講演

(1/2ページ)
2019/6/18 5:40
保存
共有
印刷
その他

講演するJリーグの村井満チェアマン(左)とスポーツ庁の鈴木大地長官

講演するJリーグの村井満チェアマン(左)とスポーツ庁の鈴木大地長官

日本経済新聞社は5月21日、2020年東京五輪・パラリンピックに向けて、スポーツを軸にした経済活性化をテーマに「第1回チャレンジニッポン」を東京・大手町の日経ホールで開いた。スポーツ庁の鈴木大地長官とJリーグの村井満チェアマンが講演したほか、パネル討論では地域におけるスポーツの可能性について様々な意見がかわされた。

■施設、まちづくりの核に
日本政策投資銀行社長 渡辺一氏

 我々組織の使命の大きな柱の一つが地域の活性化を応援することです。スポーツはそのための大きな資源と考えています。例えば、スタジアムやアリーナを街の中核施設とし、周囲に商業施設や公共施設を配備すればコミュニティーが再生され、新たな経済効果も生まれる。スポーツの機能を効果的に引き出すためにも、施設を核としたまちづくりが一つの方策と考え、提言しています。

■世界とつながり、未来を創る

スポーツ庁長官 鈴木大地氏

スポーツ庁の鈴木長官

スポーツ庁の鈴木長官

スポーツには「する」「みる」「ささえる」と様々なかかわり方がありますが、本来、どの人も身軽に楽しめるものです。スポーツ庁では2022年までの第2期スポーツ基本計画を策定しました。国民の人生がスポーツによって変わり、社会が変わり、世界とつながり、未来を創るという指針を打ち出しています。

成人の週1回のスポーツ実施率を65%まで引き上げることは目標の一つです。年代別では仕事や家事に忙しい若い世代が実施率を下げています。そのため「スポーツ・イン・ライフ」を提唱し、1日当たり8000歩を歩こうという「FUN+WALK PROJECT」や、スポーツ活動を行っている企業を奨励する「スポーツエールカンパニー制度」を始めています。

利益を上げて環境改善に充てることでスポーツ参画人口を拡大し、スポーツ市場が拡大するという正の循環を狙っています。我々が最近重要視するのがスポーツ・オープン・イノベーション・プラットフォーム(SOIP)の構築です。競技団体、企業、大学・研究機関が横のつながりを持ち、各団体のコンテンツに最先端の技術が融合することで、さらにスポーツの価値が高まると考えています。

インバウンドにも注目しており、スポーツツーリズムとしてアウトドアと武道を2つの柱としました。外国人を対象に「日本でどんなスポーツを見てみたいか」とアンケートをとると、武道が上位に入ります。武道の体験はもちろん、実際に武道の創始者の故郷を訪れてみたいなどと、精神的な部分にも興味を持たれている。東京だけでなく地方の武道場や学校の体育館などにどんどん行っていただいて、地方にお金が落ちるような仕組みができないかと考えています。

地方の活性化という点では大学を通したスポーツ振興も重要です。今年、大学スポーツ協会(UNIVAS)が発足しました。スポーツと学業を両立してきた人を表彰する仕組みや、大学スポーツの情報発信などができればと思います。

これからラグビーワールドカップなど様々な国際大会が日本で行われ、20年には東京五輪・パラリンピックを迎えます。これを2~3週間だけのイベントで終わらせてはいけません。00年以降の五輪・パラリンピックで、大会前後に国民のスポーツ実施率を測った例はありません。五輪を開催すれば国民がスポーツを楽しみ、健康になり、医療費を抑えることにもつながるという新しい東京・日本モデルを発信したい。スポーツの新しい価値をつくれればと思います。

 鈴木大地
1967年千葉県生まれ。88年ソウル五輪では競泳男子100メートル背泳ぎで金メダル獲得。引退後は日本水泳連盟会長や日本オリンピック委員会理事を経て、2015年より現職。

■サッカー「使って」社会連携

Jリーグチェアマン 村井満氏

Jリーグの村井チェアマン

Jリーグの村井チェアマン

Jリーグは発足当時から「Jリーグ百年構想」をスローガンとし、地域密着をポリシーに27年目を迎えました。芝生の広場を街にたくさんつくり、100年たったら日本が緑であふれるように。サッカーに限らずいろんなスポーツが楽しめるように。そういう触れ合いの場を開くことをずっと提唱し続けてきました。

理念の一つに「豊かなスポーツ文化の振興及び国民の心身の健全な発達への寄与」があります。「国民の」と書くからには、全都道府県にプロスポーツが身近にあるような状態をつくらなければと、現在までに39都道府県に55クラブを置いています。クラブ経営は大変ですが、もうけではなく、理念のためにやらなければと思っています。

クラブづくりでは社会貢献活動も推奨されています。現実はサッカーを通じて地域を豊かにしていくための悪戦苦闘で、海外からスター選手を呼んでファンの関心を向かせる一方で、地域住民に対してホームタウン活動を地道に行うといった取り組みを25年以上続けてきました。

ただ、各クラブが年間計2万回以上のホームタウン活動を行う中、活動をこれ以上増やすのには限界があります。そこで近年始めたのが「Jリーグをつかおう!」。Jリーグを手段にするという発想の転換です。学校やNPO、ビジネス関係者がJリーグに加わって一緒に価値をつくり、地域の持続性を上げられるようかじを切っています。

例えば、川崎フロンターレは地元のNPO法人らと連携し、重度の発達障害者やホームレス、ひきこもりなど200人弱の方々に、スタジアムの椅子の清掃や(ごみの)分別回収を1年間やっていただき、実際に10人に1人の割合で正規就労に結びつきました。リーグが何かしたのではなく、「場」を提供した形で、こうした活動に新たなスポンサーがつく状況まで生まれ始めています。

活動を通じて気づいたのは「する」「みる」「ささえる」というこれまでの考え方に加え、第4のかかわり方として「スポーツを使う」という世界観があることです。特に、チームでプレーするサッカーはこの考え方と相性がいいのではないでしょうか。行政におねだりするような世界観から、地域のことはもう自分たちでやろうという活動は、自分から1歩踏み出さないとプレーできないサッカーととても親和性が高いはずです。

サッカーはオウンゴールなど時にミスも起こりうる競技です。この社会連携活動はまだまだ初めてのことばかりですが、サッカーだからミスを許していこうという心構えで進められたらと考えています。

村井満
1959年埼玉県生まれ。日本リクルートセンター(現リクルートホールディングス)入社後、同社執行役員などを歴任。2008年よりJリーグ理事を務め、14年より現職。
  • 1
  • 2
  • 次へ
保存
共有
印刷
その他

電子版トップスポーツトップ

日経2020イベント&ストーリー 一覧

フォローする
ホテルの客室から見える新国立競技場(東京都新宿区)


 カーテンを開ければオリンピックスタジアム――。新しい国立競技場の前に都市型ホテルがお目見えする。このホテルがこだわるのは、明治神宮外苑(東京・新宿)とスポーツの歴史だ。「幻の世界記録」達成の現場とな …続き (11/20)

フォーラムでは共生社会を巡りパネル討論も行われた(19日、東京都千代田区)


 日本経済新聞社は19日、2020年東京五輪・パラリンピックを機に、障害者や高齢者が活躍できる社会にしていく際の企業の役割を考える「第6回日経2020フォーラム」を東京・大手町の日経ホールで開いた。 …続き (11/19)


 2020年東京パラリンピックが近づき、障害者スポーツ大会に多くの観客が集まるようになってきた。大会関係者の多くは今後、競技会場で観戦を楽しむ車いす利用者や視覚障害者が一段と増えるとみている。心配なの …続き (11/6)

ハイライト・スポーツ

[PR]