2019年6月18日(火)

イラン、米制裁で原油輸出半減

中東・アフリカ
北米
2019/6/12 20:01
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【テヘラン=岐部秀光】安倍晋三首相は12日からのイラン訪問で、対立する米国とイランを仲介する糸口を探る。トランプ米政権による経済制裁で原油輸出が半減し、イラン経済には深刻な打撃が広がる。強硬派が主導する米イラン関係は偶発衝突のリスクが高まり、緊張を緩和する必要性が高まっている。

対立激化の引き金はトランプ政権が5月上旬、それまで日本などに認めてきた「制裁適用除外」を撤廃し、イラン産原油の購入を全面的に禁じたことだった。韓国、トルコも次々と輸入を停止し、日量100万バレル近くあったイランの原油輸出は一気に半減した。

市場関係者によると、イランの足元の輸出は25万~50万バレル程度。200万バレルを超えていた18年のピークに比べて4分の1以下だ。イランは19年度予算で150万バレル程度の輸出を見込んでいたが、歳入の柱である原油の販路を失い、将来世代のために蓄えた政府系ファンドの資金の取り崩しを迫られている。

輸出はさらに先細りする公算が大きい。中国も国有企業が標的になるのを恐れ、米制裁に従う姿勢を見せる。現在もイラン産の大半を引き受けているが、「購入」ではなくイラン国内に持つ油田権益からの「債権回収」が名目だ。5月までは総選挙を理由に態度を保留してきたインドも、輸入継続は難しいとみられている。欧州連合(EU)もドル制裁を回避するためにつくった特別目的事業体(SPV)が機能していない。

米はイランがタンカーからの原油を洋上で積み替えて輸出する「瀬取り」を広げていると指摘するが、リスクを伴う取引に応じるのは小規模の製油業者だけとみられる。

経済的に追い込まれるなか、イランでは保守強硬派が発言力を強めている。穏健派のロウハニ大統領が米国に対話のシグナルを発しても、強硬派はロウハニ師が求心力を取り戻すのを警戒して打ち消しに動く。

米国でもトランプ大統領が「イランが我々との戦いを望んでいるとは思わない」と軍事攻撃の可能性を否定する一方、対イラン強硬派のボルトン米大統領補佐官は強気の姿勢を崩さない。

「対話」と「挑発」の矛盾するシグナルが乱発され、単純な誤解や計算違いが深刻な危機をもたらしかねない。

世界で最も不安定な地域である中東では、危機がまたたく間に各地に飛び火する懸念も強い。イランは周辺アラブ国でイスラム教シーア派民兵を通じて影響力を強めたが、末端組織の暴走まで制御できるわけではない。イランは核合意の義務履行の部分的な停止を示唆するが、合意が崩壊すればサウジアラビアなどを巻き込んだ核開発ドミノに直結しかねない。

日本は米国ともイランとも友好を維持してきたユニークな立場にある。「米国第一主義」を掲げるトランプ政権が中東から軍事力撤退を進めて「力の空白」が広がるなか、日本が中東外交で役割を果たす意味は小さくない。日本だけでなくアジアの経済が中東産の原油に依存する構図はしばらく変わらないからだ。

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