2019年7月19日(金)

配車サービス陣取り乱戦 ソフトバンクなど攻勢
XaaSの衝撃

日経産業新聞
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2019/6/17 4:30
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NIKKEI BUSINESS DAILY 日経産業新聞

配車サービスが「戦国時代」の様相を呈してきた。米ウーバーテクノロジーズや中国の滴滴出行といった海外大手が相次ぎ参入。ライドシェアを封印する一方でタクシー配車の対応エリアを拡大している。ジャパンタクシー(東京・千代田)など日本勢は対応台数の多さで対抗する。次世代移動サービス「MaaS(マース)」に欠かせない機能だけに、一歩も引けない混戦が続く。

■ウーバー、タクシー大手と相次ぎ提携

4月、米ウーバーテクノロジーズの日本法人ウーバージャパン(東京・渋谷)は第一交通産業など広島でのタクシー配車で協業すると発表した。ウーバーのモビリティ事業ゼネラルマネージャー、トム・ホワイト氏は「真のパートナーシップの証し、タクシー業界へのコミットメントの証しだ」と胸を張った。

ウーバージャパンはタクシー配車サービスの展開都市を広げている。18年9月に名古屋で始めて以降、大阪や東北にも進出。4月には広島のほか京都でもタクシー大手のエムケイ(京都市)と組んでサービスを始めた。

ウーバーは世界で「自家用車を使った有料相乗り」という事業形態を広めた、ライドシェアの代名詞ともいえる存在。だが日本では現状、こうしたサービスは「白タク」扱いになり法的に認められていない。参入当初は日本でもライドシェア事業を試みたが、タクシー業者の猛烈な反発を受けて断念した。

以来、ウーバージャパンは各地で着実に地歩を固めてきた。広島・京都への進出は第一交通産業・エムケイといった全国展開するタクシー大手を取り込んだだけに、今後の展開で大きな意味を持つ。ホワイト氏は「東京でもオペレーションしたい」と首都への進出に意欲を見せる。

■滴滴やソニー、DeNA交え乱戦

海外市場でウーバーと肩を並べる中国の滴滴。日本ではソフトバンクとの合弁会社DiDiモビリティジャパン(東京・港)が運営を担う。滴滴は18年9月に大阪に進出すると、半年間で提携先のタクシー会社を12社から42社に急拡大させた。今年4月には東京・京都、5月には兵庫でサービスを開始。近く北海道や福岡にも進出するほか、19年度中に計13都市での事業展開を目指す。

迎え撃つ日本勢の筆頭はジャパンタクシーだ。グループ会社のタクシー業界最大手、日本交通(東京・千代田)をはじめ約900に上るタクシー事業者と組み、既に全都道府県に進出済みだ。

IT(情報技術)系企業の取り組みも目立つ。ソニーが大和自動車交通や国際自動車(東京・港)といった都内タクシー大手5社と共同でみんなのタクシー(東京・台東)を設立。4月に配車アプリ「S.RIDE」を始めた。

ディー・エヌ・エー(DeNA)は神奈川県内で提供してきた配車アプリ「MOV(モブ)」の提供を18年12月から都内でも始めた。日の丸自動車や東都自動車、第一交通産業などと連携する。今夏には京都・大阪への進出も計画している。

ウーバーや滴滴などの巨大な外資勢と、それに対抗する国内勢という構図は今後も続く見通し。競争の行方はユーザー数と技術力が左右しそうだ。

ユーザー数はタクシー事業者がどの配車アプリを導入するかを決める尺度になる。利便性が上がり、ユーザー数がさらに増えるという好循環を生めるかどうかが鍵となるためだ。

ユーザー数ではジャパンタクシーが一歩先を行く。ダウンロード数は700万を超え、対応台数も約7万台と群を抜く。海外勢は国内での対応台数を公表していないが、DiDiは中国に約5億5千万人、ウーバーも全世界に9千万人のユーザーを抱えており、訪日外国人(インバウンド)の認知度で優位性がある。

■訪日客に知られているかが鍵に

京都では4~5月の10連休中のDiDi利用者のうち、中国人の比率が約4割に上った。京都市の17年の調査では、利用する主な交通手段としてタクシー・ハイヤーと答えたインバウンド客は全体の4%にとどまった。DiDiの導入が中国人客の取り込みにつながっていることが読み取れる。

ウーバーの広島進出の際の記者会見で第一交通産業の田中亮一郎社長は「我々がウーバーと仕事をすることで(訪日客にとって)もっとタクシーが乗りやすいものになると期待している」と指摘した。

年間延べ利用者数がこの25年で半減したタクシーの事業者にとって、インバウンド客の囲い込みは最重要課題だ。海外利用者の多さをアピールし参画事業者を増やせれば結果的に日本での利用者も獲得しやすくなる。

技術力も重要だ。DiDiモビリティジャパンの菅野圭吾副社長は「エンジニア力が大きな違いを生んでいる」と指摘する。人工知能(AI)先進国、中国の巨大なエンジニア集団が同社の競争力を支える。

■提携で営業収入10%増の例も

DiDiの売りは配車時間の短さ。AIを使い効率的にタクシーと利用者をマッチング。利用者が配車依頼してからおおむね5分以内でタクシーが到着するという。

効率性はタクシー事業者にもメリットをもたらす。大阪のあるタクシー会社ではDiDiの導入により、同じ走行距離で実車率が5%、営業収入が10%増えたという。今後はAIを活用して需要地を予測したり、車庫に戻るルート上の注文だけを受注できるようにしたりするシステムなども提供していく。

DiDiモビリティジャパンの菅野副社長は「今後異業種を含め合従連衡が進んでいくのは確かだ」と話す。各社には利用者、タクシー事業者、MaaSのプラットフォーマーの3者をにらんだ事業展開が求められている。

(企業報道部 高尾泰朗、井沢真志)

[日経産業新聞 6月13日付]

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