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今日も走ろう(鏑木毅)

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高齢ドライバーへの対応 幅広い問題意識必要に

2019/6/13 6:30
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4月に東京・池袋で高齢ドライバーが引き起こした事故は衝撃的だった。私にも妻と6歳になる娘がいるので遺族の無念さはとても人ごととは思えないし、強い憤りに似た思いにとらわれた。

先日、実家に帰省した際、最寄り駅まで母に迎えに来てもらった。農村地帯で駅までが遠い。72歳の母には申し訳なかったけれどやむを得なかった。すると車が走り出してすぐ、路側帯の歩行者に急接近し慌てた。母は車の運転もこれまで大きな事故も違反もなく信頼していただけにショックだった。あれは誰でも身近に起こりうる出来事なのだ、と悟った。

このような問題に対応すべく一定年齢以上の高齢者の免許保有を厳格にする案もあるようだ。認知症の傾向も調べるなど、妥当かの基準は以前より厳しいらしい。ただ疾患とは無縁の高齢者に対し適正かどうかを判断するのは難しい気がする。

また高齢者から免許を取り上げれば問題は解決かといえば、事はそう簡単ではない。交通環境の整っている都市圏では大胆な規制も可能だろうが、地方ではマイカーなしには生活が成り立たない。

トレイルランのレースは過疎地域の高齢者にお世話になっている(三重県熊野市)

トレイルランのレースは過疎地域の高齢者にお世話になっている(三重県熊野市)

トレイルランのレースの多くは過疎地域で行われ、日ごろから地元の高齢者のお世話になっている。仕事で山間部に行くと四つ葉マークを付けた危ない運転をする車によく出くわす。鉄道の駅から遠く、バスなどの公共交通機関は日に数本の運行しかなく実質的には使えない。そのため高齢者が危ない思いをしても車を運転する必要性は理解できる。

県庁職員として交通行政にも携わった経験からみて、地方の公共交通の難しさは、そのコストにある。利用者減の状況でバス路線を維持しようと運行本数を減らすと利用者は離れる。かといって公金を投入して維持すれば、少数利用者のために運行する意味があるのかとやり玉にあげられる。

実家では、近くの知り合いが両親のところへ「救急車を呼ぶほどではないが、街の医者まで連れて行ってくれないか」と頼んできたこともあったそうだ。高齢者の単身世帯でタクシーを利用するには高価だし、知っている人に寄り添ってもらう方が心強かったのかもしれない。人の思いはさまざま。

使途を限定してこうした費用の補助をしている自治体もあるにはあるようだ。全国にはコミュニティーを結成し地域の自主的な力を合わせ比較的少ない費用負担で交通課題を解決している自治体もあると聞く。こうした制度を普及・拡大させるには行政の柔軟さと規制緩和が大切だ。

交通問題の最大の解決策の一つは自動運転の車が早く普及することだろう。とはいえ行政による規制のハードルが高い日本ではまだだいぶ時間がかかりそうだ。高齢ドライバーにまつわる問題は交通だけでなく、地域振興や福祉、雇用といった多岐にわたる問題意識が求められる。従来の考えにとらわれない発想でもって、解決の糸口をなんとか見つけられないものだろうか。

(プロトレイルランナー)

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