2019年6月21日(金)

年金への根強い不安露呈 「老後2000万円」報告書撤回

金融機関
2019/6/11 22:00
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金融庁は11日、老後の金融資産が約2000万円必要とする試算を盛り込んだ報告書の事実上の撤回に追い込まれた。麻生太郎金融相が同日、「正式な報告書として受け取らない」と表明した。有識者会議でまとめた報告書が認められないのは異例だ。騒動の広がりは将来の生活設計に対する不安を映し出した。政府が公的年金制度改革を着実に進める必要性が改めて浮き彫りになった格好だ。

記者会見する麻生金融相(11日、財務省)

記者会見する麻生金融相(11日、財務省)

「世間に著しく不安や誤解を与えている」。麻生金融相は11日の閣議後記者会見で、政府として金融庁の報告書を認めない考えを示した。10日の参院決算委員会では「個々人の状況に応じて上手な資産形成ができるようにすることも大切」と一定の配慮を示していたが、一転して所管の金融庁に撤回を求めた。

金融庁の金融審議会が3日にまとめた報告書は定年退職後に必要とされる金融資産の推計を示した。夫が65歳以上、妻が60歳以上の無職世帯が年金に頼って暮らす場合、毎月約5万円の赤字が出ると試算した。この後、30年間生きるには約2000万円が不足するとした。

報告書をまとめた有識者が示したのは、退職金を含めた長期の資産形成による備えが必要という提言だった。ただ、より注目を集めたのは公的年金だけに頼った生活は成り立たないという点だ。公的年金への不信感の根強さが今回の騒動を拡大させた側面が強く、将来への不安が大きいことを改めて浮き彫りにした。

政府の制度設計によると、現役世代の所得に対する年金の水準はいずれ50%程度に下がる見通しだ。将来への不安を和らげるには、現在の年金受給者への給付を抑え、将来世代に回す仕組みづくりが課題になる。報告書の撤回で終わらせず、将来の不安を払拭する対策に正面から取り組んでいく必要がある。

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