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楕円球の美 肉体の記憶 彫刻家・名和晃平さんに聞く 熱狂と創造の青春 作品に

ラグビーW杯
2019/6/28 15:49
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学生時代にラグビーに親しんだ名和晃平氏(同氏がプロデュースしたスターバックスコーヒー 京都BAL店)

学生時代にラグビーに親しんだ名和晃平氏(同氏がプロデュースしたスターバックスコーヒー 京都BAL店)

日本のラグビーと意外に関わりが深い分野が芸術である。特に著名な彫刻家には経験者が多い。世界的に著名な名和晃平さん(43)もその一人。15年ほど競技に熱中し、このたびは楕円球をモチーフにした作品も制作した。ラグビーと芸術の交差点はどこにあるのか。

昨年7月。パリ・ルーヴル美術館のガラスのピラミッドに、金色の物体が登場した。玉座を意味する「Throne」と名付けられた名和さんの彫刻。美の殿堂の「顔」に日本の作品が展示されたのは初めてだ。

名和さんが中学1年から28歳まで没頭したのがラグビー。「バスケットボールならドリブルをしないと動けない。サッカーも野球もやったけど、自由自在に走れる方がいいと思ったらラグビーだった」。ポジションはSO一筋。50メートル先の味方の胸に届くキックは努力のたまものだった。大阪・茨木高で美術室とグラウンドを往復するような生活の中、毎日300本くらい蹴り込んだ。「ストイックすぎて背中を圧迫骨折し、今も体の右側がしびれる」と苦笑い。「でもそれくらい魅力があった」と強調する。

「骨折をしても痛くないほど脳内麻薬が出て、興奮状態で戦う。しかも集団で。平和ぼけしている日常から非日常の戦闘状態に入るのがやめられないくらい面白かった」

京都市立芸大では"芸武両道"を貫いた。「ラグビーばかりで制作がおろそかになると格好悪いっていう部の伝統があった。先輩やOBも他人の倍、頑張れとハッパを掛けてくれた」。卒業後はOBチームでもプレーした。彫刻家に経験者が多いことについては「美大では腕っ節の強い人が集まり、ラグビー部をつくることが多かった」と話す。スペインのサグラダ・ファミリアの主任彫刻家、外尾悦郎さんら楕円球の縁で知遇を得た人も多い。

「ラグビーにはルールがある。アートは逆にルールがない世界。大きく違う」と言いつつ、現役時代は「誰も発想したことのないサインプレーをつくりたいと思い、色々試した」と振り返る。「スクラムがあってバックスが(1列に)並ぶのは儀式的なフォーメーション。解体し、相手が対応できないやり方をつくれるのではと考えた」。既成概念からの逸脱、超越を目指す発想は、今の創造力と似ているような。

楕円球をモチーフにした「Flesh-Ball」(C)Toshihide Kajihara

楕円球をモチーフにした「Flesh-Ball」(C)Toshihide Kajihara

Throneは人工知能がモチーフの一つ。一方で肉体の形態を強調した舞台も制作する。ラグビー経験との相関は?

「フィジカルな表現がグッと来るというのはある。ミニマルな作品は身体から遠ざかるベクトルにあるが、対極として時々フィジカルな所に引き戻すのは大事。コンピューターだけで物を考えて作る時代になりつつあるが、体で確認することが違った意味で大事になってきているのかな」

三菱地所と彫刻の森芸術文化財団がラグビー経験のある芸術家に制作を依頼するイベントに協力し、楕円球をテーマにつくった。「裸の男女30人くらいの肉体が塊になり、ラグビーボールをつくっている。肉体の記憶みたいなものです。深い意味はない(笑)。見てもらうしかない」。今も時々、テレビでラグビー観戦をする愛好家。W杯の日本戦は1試合、現地で見る予定だ。(谷口誠)

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