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W杯からトップリーグへ 祭りの熱を日常につなげる
FIFAコンサルタント 杉原海太

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2019/6/12 6:30
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今年9月から11月にかけて、日本各地で開催されるラグビーのワールドカップ(W杯)や来年夏に東京を主会場に行われるオリンピック・パラリンピックなどのスポーツイベントはある意味、世界的な祝祭といえる。祭りが巨大であればあるほど、終わった後に深い虚脱感に襲われるのも世の常だ。しかし、スポーツの場合、その非日常的な祭りの余熱を決して冷ますことなく、日常へとつなげる作業が非常に大事だと思っている。

フォローのはずが…スタンドに空席

5月19日、東京都内で三菱地所が主催した「丸の内15丁目プロジェクト」というイベントに足を運んだのだが、そこでラグビーの元日本代表で、2011年と15年のW杯にも出場した畠山健介さんのスピーチを聞かせていただく機会があった。

80人ほどの聴衆を前にした畠山さんの話で、一番驚いたのは、ラグビーのトップリーグ(TL)を戦って一番印象に残ることに「15年W杯直後のトップリーグの開幕戦」を挙げたことだった。

15年W杯といえば、日本が初戦で南アフリカに逆転勝ちするなど、世界に大きなインパクトを与えた大会である。ここで一気に日本ラグビーに大きなフォローの風が吹くのかと思ったら、同年11月13日のパナソニック対サントリーのTL開幕戦(秩父宮ラグビー場)に集まった観衆は1万792人。この数字、前年の開幕戦(パナソニック対東芝、1万1162人)より少なかった。

チケットは形の上では完売していたが、スタンドは空席が目立った。チケットが欲しいラグビーファンはいくらでもいたのに、そこに割り当てられたボリュームが小さかったのだろう。一方でチームやスポンサー企業に配られたチケットはだぶつき、本当に欲しい人にチケットが行き渡らなかった。それが空席の原因だったようだ。

今季国内最終戦後、サンウルブズの選手に声援を送るファン。W杯を控え機運は盛り上がっているが…=共同

今季国内最終戦後、サンウルブズの選手に声援を送るファン。W杯を控え機運は盛り上がっているが…=共同

サントリーの選手だった畠山さんが11年に及ぶTLでの競技人生の中で、わざわざこの試合を「印象的」と挙げたのは、それだけ受けたショックが大きかったからだろう。代表が勝てば、おのずとその競技と周辺は盛り上がり、子供たちを中心に競技人口は増え、トップ同士の対戦には大勢のファンが詰めかける……。そんな淡い期待ががらがらと崩れ落ちたのかもしれない。

日本人は「日本が世界にチャレンジする」構図が大好きだから、競技を盛り上げるために代表チームを着火剤にするのは今も昔も有効な手立てのはず。問題は、火の手が上がったら、それをどう燃え移らせていくか。言い換えれば、非日常からどう日常に広げていくかにあるのだろう。

「この後はJリーグをよろしく」

オリンピックでも、せっかくメダルを獲得しても、その競技全体の振興という意味では一過性の打ち上げ花火で終わる例は多い。それもまた、非日常と日常にブリッジを懸ける戦略が乏しいことが原因だろう。ラグビーも追い風は吹いていたのに、タイミング良く帆を張ることができず、普及や文化定着のチャンスをみすみす逃したというのが、実際のところではないだろうか。

そのとき、ふと思い出したのはサッカーの中田英寿さんのことだった。1997年11月、サッカーの日本代表が初めてのW杯出場をマレーシア・ジョホールバルでのアジア最終予選で決めたとき、当時まだ20歳だった中田さんは「この後はJリーグをよろしく」とテレビのインタビューで答えた。W杯予選の狂騒を、リーグという日常につなげていくことの大切さを、あの若さで中田さんは理解していたのである。

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