米製薬会社が破産法11条申請、オピオイド問題訴訟で
【ニューヨーク=関根沙羅】米国の製薬会社インシス・セラピューティクスは10日、米連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)の適用を申請したと発表した。同社はオピオイド系鎮痛剤の販売方法を巡って米検察当局から調査を受けており、5日に数億ドルを支払うことで合意していた。オピオイド中毒のまん延に関する訴訟にからんで企業が経営破綻するのは初めて。

インシスは、オピオイド系鎮痛剤「サブシス」の販売促進のために違法な販売活動を行ったとして、米検察当局から調査を受けていた。5日には2012~15年にかけて、同薬の処方を増やした医師に対しリベートを支払うプログラムを運営していたことを認め、2億2500万ドル(約244億円)を支払うことで合意していた。
サブシスはがん患者向けの強力な鎮痛剤で中毒性が高いとされる。販売促進のためにサブシスを必要としない患者にも同薬が処方された疑いがもたれていた。5月にはボストンの連邦陪審が、医師に賄賂を渡してオピオイド系鎮痛剤を処方させ、オピオイドの乱用を招いたとして創業者のジョン・カポア被告ら幹部5人に対し有罪評決を下していた。
オピオイド系鎮痛剤は依存性が低いとして1990年代に売り出されたが、その後乱用や中毒患者が急増した。米国疾病予防管理センター(CDC)によると、2017年のオピオイドの過剰摂取による死亡数は4万7600人にのぼる。最近では、製薬会社がオピオイドの危険性の周知を怠り、中毒のまん延を招いたとして責任を問う動きが広がっている。
10日の米東部時間午後3時半時点で、インシスの株は前日比約53%安まで売られている。オピオイド中毒のまん延を巡っては、米製薬大手ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)やパーデュー・ファーマも訴訟の対象となっている。