仮想アイテムが高額化 100万円のデジタルドレスも
CBインサイツは今年初め、「2019年の高級トレンド」と題するリポートで多くの製品を取り上げ、バーチャル高級品が増えると予測した。バーチャルグッズとはオンライン上のコミュニティーやゲームで作成、販売、利用される架空のモノを指す。そのうち最も高価なのがバーチャル高級品だ。
CBインサイツのデータに基づく勘は正しかったようだ。オランダのスタートアップ企業、ザ・ファブリカント(The Fabricant)は5月、ブロックチェーン(分散型台帳)を使って制作したデジタルドレスを9500ドル(約100万円)で販売した。

ちなみに、これは高級ブランドを主に扱う英ネット通販「ファーフェッチ(Farfetch)」で販売されている高級ブランド「グッチ」のスパンコールドレスと同じ価格だ。
そのわずか数日後には、アバターの開発を手掛ける米スタートアップ、ジーニーズ(Genies)がシリーズDの資金調達ラウンドで700万ドル弱を調達したことが、米証券取引委員会(SEC)に提出された資料で明らかになった。
グッチは18年11月にジーニーズと提携し、バーチャル版アイテム200点をジーニーズのプラットフォームで提供している。
バーチャル高級品に商機
バーチャル高級品の市場規模はまだごく小さいが、大きな可能性を秘めている。米調査会社スーパーデータリサーチによると、ビデオゲーム内で販売される仮想アイテムの市場規模は約500億ドル相当に達しており、今後数年にわたって年6%以上成長する見通しだ。
これは明らかに、消費者が仮想空間のキャラクターに着せる服やアクセサリーに多額の資金を使ってもよいと思うようになっている兆しだ。オンラインゲーム利用者と同様に、高級ブランドの顧客もすぐに仮想アイテムに数十億ドルを費やすようになるだろう。
高級ブランドにとってもチャンスとなる。バーチャル版の服やアクセサリーは、現実社会のアイテムの売り上げに悪影響を与えることなく新たな収入をもたらしてくれるからだ。チャンスはこれにとどまらず、バーチャル高級品を軸にした新たなエコシステム(生態系)もすぐに発達するだろう。
バーチャル高級ブランド
バーチャルな製品やアクセサリーに特化した新たな高級ブランドの登場もあり得る。
ザ・ファブリカントなどの新興勢がバーチャルコレクションを展開するようになれば、これを購入した顧客は写真やVR(仮想現実)の中でバーチャルドレスを着られるようになる。
こうしたブランドが現実版の製品も作るようになれば、既存の高級ブランドと直接競合する。
バーチャルマーケティング
仮想アイテムが増えることで、商品やブランドの広告方法にも新たな商機が生まれる。
CGで作られた「バーチャルインフルエンサー」は既にソーシャルメディアで数百万人のフォロワーを獲得し、現実世界のブランドと提携している。例えば、スタートアップの米ブラッド(Brud)が生み出したバーチャルモデル「リル・ミケーラ」はこのほど、米アパレルブランド「カルバン・クライン」の下着の広告に起用された。

高級ブランドは仮想アイテムを使って新たなデザインを試したり、フィードバックを受けたりすることもできる。カスタマイズ製品の作製も容易になる。
バーチャル販売
高級ブランドが仮想のバッグやシューズ、服を売るには、仮想店舗の開設が必要になる。
仮想世界で既存店を再現してもよいが、アバターや専用アクセス、バーチャル店員などを備えた全く新たな仮想の買い物体験をつくりだすことも可能だ。
ゲーム内の仮想アイテム市場の成長で「ナガバーチャル(NagaVirtual)」や米ベンチャーキャピタル(VC)大手アンドリーセン・ホロウィッツが出資する「フォルテ(Forte)」といったマーケットプレースが誕生したように、仮想グッズを手掛けるネット通販が台頭するチャンスになる。
もっとも、バーチャル高級品が台頭すれば、様々な問題も生じる。
・仮想グッズが本物であることをどうやって証明するのか
・どうやって安全に保管するのか
・劣化することがない製品の需要をいかに作り出すのか、など
こうした仮想の商品をプレミアム価格で売るには、現実世界と同様に適切なプラットフォームを見つけ、希少性を演出し、偽物を排除できるかがカギとなる。