2019年7月18日(木)

「eポートフォリオ」高校で導入増 生徒が活動を記入

社会
2019/6/11 11:30
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高校での学習や部活動などの記録を生徒自身が電子データにまとめる「eポートフォリオ」を導入する動きが広がっている。2020年度から始まる大学入試改革で「主体的に学ぶ態度」が重視されることが背景にある。生徒の学習態度や学校生活について高校教員が作成する調査書(内申書)と連動させて大学入試で使う案も出ている。

宿泊防災訓練の振り返りをスマホに記入する生徒(5月、東京都立戸山高校)

宿泊防災訓練の振り返りをスマホに記入する生徒(5月、東京都立戸山高校)

東京都立戸山高校(東京・新宿)の教室で5月末、1年生が自分のスマートフォンを使い、校内で実施された宿泊防災訓練の活動をインターネットのサイトに熱心に記入していた。「活動を振り返って感想を答えなさい」との項目に、ある男子生徒は「大人について行くだけになってしまったので次回は自ら役割を見つけたい」と記入した。

生徒が記入していたのはeポートフォリオと呼ばれるシステムのサイトだ。生徒がパソコンやスマホなどから日々の学習や部活、ボランティア活動での実績や得た教訓などを記入し蓄積していく仕組みで、生徒専用のデータベースといえる。生徒は授業で一斉に記入することもあれば、登下校中の電車内や自宅で記入することも。サイトには教員や保護者もアクセスでき、指導や助言に生かせる。

同校は「活動の振り返りを通じて自分の興味や関心を把握し、主体的に学べる生徒を育てたい」と18年度に導入した。近藤明夫主幹教諭は「教員も生徒が関心を持って取り組んでいることを把握しやすくなり、生徒とのコミュニケーションが増えた」と話す。

eポートフォリオは複数の企業が開発している。文部科学省の委託で関西学院大などが17年に開設したサイト「ジャパンeポートフォリオ」は、3月末時点で全国の高校約3300校と、約19万7千人の生徒が参加している。企業が開発した各種サイトに蓄積されたデータを、ジャパンeポートフォリオのサイトに移し替えて使うことも可能という。

eポートフォリオが広がる背景には、20年度からの大学入試改革がある。文科省は知識・技能や思考力・表現力などに加え「主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度」を評価するよう大学に求めている。受験生にとっては高校時代の成長や学ぶ意欲を示す必要が出てくる。

同改革では高校が大学に提出する生徒の調査書も、従来のA4判1枚の裏表両面から、枚数が無制限になってボランティア経験や表彰歴など項目が細かくなる。調査書に記入する教員の負担増を抑えつつ記載内容を充実するため、生徒自身が日々の成長を入力していくeポートフォリオに注目が集まっている形だ。

3月末時点でジャパンeポートフォリオには113大学が参加しているが、ほとんどが「参考データとして利用する」としており、入試の合否判定に使ったのは群馬大、同志社大、大阪教育大など11校にとどまる。文科省は22年度から調査書を電子化し、ジャパンeポートフォリオへのリンクを記載できるようにすることを検討している。実現すれば多くの大学が入試の際にeポートフォリオの記載内容を参照する可能性が出てくる。

ただ、大学入試での活用を広げるには、記載内容の信頼性をより高めることが必要になる。岐阜大の村瀬康一郎教授(教育工学)は「生徒は探究活動などで使ったプレゼンテーション資料を添付するなどして客観性を持たせる必要がある。大学も単に生徒が何をしたかではなく、その過程を評価する方法を考えていくべきだ」と話している。

(中村信平)

▼eポートフォリオ 生徒がスマートフォンやパソコンを使って学校内外の活動をインターネット上のサイトに記録するシステム。「探究活動」「生徒会・委員会」「学校行事」「部活動」「学校以外の活動」「留学・海外経験」「表彰・顕彰」「資格・検定」などの項目について、生徒が振り返りや成果、教訓などを記入する。記載内容を教員が承認する仕組みにすることで、虚偽の記入などを防げるという。

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