中国、重要技術の輸出制限検討 人民日報など報道

【広州=比奈田悠佑】中国政府がハイテク領域などで独自技術の輸出を制限する制度を検討する。中国共産党機関紙の人民日報などが9日、政府が近く「国家技術安全管理リスト」と呼ぶ仕組みを設けると報じた。米国との貿易戦争にからみハイテク摩擦も激しくなるなか、米側を揺さぶる狙いがあるとみられる。
ハイテク摩擦を巡っては中国が最近、電気自動車(EV)の部材などとして不可欠なレアアース(希土類)で新しい輸出管理システムを設ける方向で検討に入ったことが明らかになったばかり。
独自技術を巡る新制度の詳細は明らかでない。世界で競争力を持つ国内の技術をリストアップして研究開発を後押しするほか、国外への輸出を管理、制限する目的があるとみられる。国家事業として力を入れている航空宇宙分野や世界で大きなシェアを持つ鉄道関連などの技術がリストに加わる可能性がありそうだ。
新制度について中国国営の新華社は「特定の国が中国の技術を使い、かえって中国の発展を妨げることを防ぐ」と報じた。人民日報は「重要技術の発展を加速し、強力な『ファイアウオール』を構築する」と解説する一方、「中国の門戸が閉じられ、(他国との)協力の足取りが緩むわけではない」と説明した。
トランプ米政権が次世代通信「5G」分野から中国通信機器最大手、華為技術(ファーウェイ)の排除を狙うなど米中摩擦は軟化の兆しがみえない。通信インフラの整備などに関しては米国の方針に一部の国・地域が同調する動きもみられる。中国はより広範な分野の技術の輸出規制をちらつかせることで、特定分野での中国企業排除を阻止する狙いがありそうだ。