2019年7月24日(水)

拝啓 ベーブ・ルース様

フォローする

「上げるのでなく上がる」大谷が追求している打撃
スポーツライター 丹羽政善

(1/2ページ)
2019/6/10 6:30
保存
共有
印刷
その他

5月29日のデーゲームが始まる試合前、オークランド・コロシアムのビジターのクラブハウスでは、アルベルト・プホルス(エンゼルス)が昔のテレビゲームに興じていた。

子供の頃に遊んだことがあるのか、後ろで見ていた大谷翔平も途中からゲームに入り込む。

「やばい! やばい!」「時間ないよ!」

まるで自分がやっているかのように、無邪気な表情だった。

「ボールの上をたたいている感じ」

このころの大谷は、ヒットこそ出るものの、なかなか打球が上がらなかった。痛烈な打球も少なくなかったが、角度がつかない。ただ、そんな状況で結果として大谷の求めている一つの形が明確になりつつあった。

5月28日のアスレチックス戦。九回に右翼へ目の覚めるようなライナーを放って勝ち越しの走者を迎え入れたが、全体的な打撃の状態に関しては、「良くない」と振り返り、こう続けた。

「(ボールの)上をたたいている感じなので、ラインドライブも多いですし、ゴロも多い」

フライが少ない今季、大谷は「ポイントが前になっている」と語っていた(5月27日のアスレチックス戦)=USA TODAY Sports

フライが少ない今季、大谷は「ポイントが前になっている」と語っていた(5月27日のアスレチックス戦)=USA TODAY Sports

その日の他の打席は、ゴロ3つと三振1つ。ゴロのうちの1つは投手のベースカバーが遅れて内野安打となったものの、打球は、確かに本人が言うようなものばかり。6月3日時点で、前に飛んだ打球の内訳は、以下のようだった。

打球数(比率)
2019年 フライ 5(0.8%)
ポップアップ 0(0%)
ラインドライブ 23(36.5%)
ゴロ 35(55.6%)
18年 フライ 53(23.7%)
ポップアップ 10(0.04%)
ラインドライブ 62(27.7%)
ゴロ 99(44.2%)
参照:BASEBALL SAVANT

2018年もゴロが一番多いが、今季は極端にフライが少ない。その分、ラインドライブが増えているからいい、ということでもないよう。ラインドライブはフェンスを越えないからだ。

では、なぜ、ボールの上をたたくような打球が多いのか。

大谷は「そこは技術がなかったりとか、単に野球があまりうまくない、というところじゃないかな」と話したが、具体的なことにも言及した。

「ポイントがちょっと前にありますし、本来ならもう一つ遅らせてバットを下に入れられれば、もっと打球を上げられるんですけど、それが自分の中で前になってしまっているんじゃないかとは思います」

タイミングがわずかにずれている――。

ブラッド・オースマス監督は、「ショーヘイにはキャンプがなかったのだから」と話したが、6月2日のマリナーズ戦で今季100打席を超えた。野手が春のオープン戦で、開幕までの調整として立つ打席数のほぼ倍である。

「ヘッドの軌道が下降気味」

スポーツバイオメカニクスが専門で、国立スポーツ科学センターで打者のスイング技術の評価をテーマに研究している森下義隆さんに聞くと、「真ん中からインコース寄りのボールは、本人が言っているようにポイントが前になっているのかもしれません」と指摘し、こう補足した。

「ポイントが前になる、つまりインパクトが投手側になり過ぎると、身体に近いポイントで打撃するときよりもバットの軌道が上側に移動してしまい、ボールの上っ面をたたいてしまう確率が高くなると思います」

森下さんはさらに、「昨年よりもインパクト直前のバットヘッドの軌道がボールに対して下降気味になっているように感じます」と別の可能性も示唆。「それが原因でボールの上をたたいてしまっているのかもしれません」

  • 1
  • 2
  • 次へ
保存
共有
印刷
その他

大リーグのコラム

電子版トップスポーツトップ

拝啓 ベーブ・ルース様 一覧

フォローする
2度目の対戦となった14日、三回に菊池(18)が大谷から空振り三振を奪う=共同共同

 14日にエンゼルスの本拠地で行われたマリナーズの菊池雄星対エンゼルスの大谷翔平の先輩・後輩(岩手・花巻東高)対決は、そこに高度な駆け引きが透け、見応えがあった。
 6月8日の初対決では、内野安打、一ゴ …続き (7/22)

5日のアストロズ戦で中越えに13号本塁打を放つエンゼルス・大谷=共同共同

 3月21日の引退会見でイチロー氏(現マリナーズ会長付特別補佐)は、大谷翔平(エンゼルス)に今後期待することを問われると、こう言った。
 「世界一の選手にならなきゃいけない選手ですよ」
 1994年に21 …続き (7/8)

6月4日のアスレチックス戦で4号2ランを放った大谷。本来の角度のある打球だった=APAP

 5月29日のデーゲームが始まる試合前、オークランド・コロシアムのビジターのクラブハウスでは、アルベルト・プホルス(エンゼルス)が昔のテレビゲームに興じていた。
 子供の頃に遊んだことがあるのか、後ろで …続き (6/10)

ハイライト・スポーツ

[PR]

新しい日経電子版のお知らせ

より使いやすく、よりビジュアルに!日経電子版はデザインやページ構成を全面的に見直します。まず新たなトップページをご覧いただけます。

※もとの電子版にもすぐ戻れます。