2019年8月20日(火)

北の珍味たこまんま、姿と味のギャップに驚き
北海道・食の王国

2019/6/7 18:58
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薄皮に包まれたこぶし大の塊の中に、米粒よりひとまわり大きい卵がびっしりと詰まっている。北海道東部であがるタコの一種、ヤナギダコの卵「たこまんま」だ。不気味に光る姿に動揺することなかれ。ひとたび口に運べば、濃厚なうまみとのギャップに驚く。北海道様似町の小さな商店がこの珍味を使ったかまぼこを作ったところ、一気に人気商品となった。

薄皮を破ると無数のタコの卵が房状に連なって出てくる(北海道様似町)

薄皮を破ると無数のタコの卵が房状に連なって出てくる(北海道様似町)

北海道ではヤナギダコから取れる卵を「たこまんま」と呼んできた。ゆでると卵一粒一粒が炊き上げた米のような形になるため、タコと「マンマ」を合体させた造語というのが由来と言われる。薄皮を破ると無数の卵が房状に連なって現れる。薄皮から卵を丁寧にそぎ落とし、そのまま生でいただくのが王道だ。

生のままのしょうゆ漬けなら、濃厚なうまみを最大に楽しめる。口に含めば粒状の卵が砕け、中からドロッと粘る濃厚なエキスが舌の上に広がる。味の濃さはウニや白子にさえ例えられ、ご飯との相性も抜群だ。

広く食べられるようになったのは昭和に入ってから。それまではタコ漁の漁師が食べるくらいで、水産加工業者などは卵部分をそのまま捨てていたという。次第に家庭にも広まり、卵をすりつぶした液体を薄く焼き、子どもがお菓子代わりに食べていた時代もあった。

北海道では生食用としてスーパーなどで販売され、居酒屋やすし店でも提供されている。足は早く、北海道外で生食用にお目にかかるのはほとんどない。

どうしても見た目が気になるという向きも多く、より一般的な食べ方として認知されてきたのがたこまんまで作るかまぼこだ。襟裳岬(えりも町)にほど近い様似町で食品を加工・販売する「マルサン工藤商店」ではたこまんまを液状にすりつぶし、地物のタコやツブ貝などを混ぜてふかしたかまぼこを作り、人気を博す。1個320~450円とお手ごろだ。

同店の工藤仁社長(71)によると、工藤さんの母親がアルミ製の弁当箱に溶いたたこまんまを入れてふかしてみたのがきっかけだったという。これが意外にもおいしいと近所で評判となり、以来30年以上、商品としてお店で販売している。

かまぼこからじわりとしみ出す独特のうまみが人気の秘訣。たこまんまをすりつぶした液体をふかす際、7品の調味料などでつくる「秘伝のタレ」を混ぜて仕上げる。季節に合わせてタレの塩加減を変える一手間も欠かさない。

マルサン工藤商店が作るたこまんまのかまぼこが人気だ(北海道様似町)

マルサン工藤商店が作るたこまんまのかまぼこが人気だ(北海道様似町)

工藤さんは「生の状態の奇妙な形は、見ただけで顔を背けてしまうお客さんもいる」と苦笑い。それでも「見た目以上の特別な味わいがあるからこその商品」と、自慢のかまぼこの味には太鼓判を押す。

同店のかまぼこは多い日には1日100個以上が売れ、沖縄県石垣島から注文が入ったこともある。大手食品会社などからかまぼこを商品化してほしいとの引き合いが何度もあったが、工藤さんは断り続けている。

「あくまで自分のお店で出すのが優先。地元の人や遠くから買いに来てくれる人のために作っていきたい」とこだわりの一面も見せた。(塩崎健太郎)

■ヤナギダコ、漁場は太平洋側に集中

 北海道で取れるタコは近年増加傾向。北海道の調査によると、2013年のタコの漁獲量は1万6250トンだったが、その後少しずつ増えて17年は2万1163トンだった。道内で取れるタコはミズダコとヤナギダコの2種類があり、国内のヤナギダコの大半は北海道周辺で取れていて、主要な漁場になっている。
 ミズダコが道内全域であがる一方、ヤナギダコの漁場はほとんどが太平洋沿岸だ。17年のヤナギダコの漁獲量をみると、振興局別では様似町を含む日高が1729トンで最多だった。さらに根室から渡島までの6地域で漁獲量全体の8割以上を占め、太平洋沿岸の多さが際立っている。

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