大学共通テスト、なお公平性課題 英語民間試験は8種
大学入試センター試験の後継となる「大学入学共通テスト」の日程などの大枠が固まり、1回目は2021年1月16、17日に行われることになった。新たに英語の民間試験の活用が始まり、一部の教科で記述式問題も導入される。変更点に対しては公平性を巡る疑問、不安の声が消えておらず、残り1年半余となった本番に向けて課題はなお多い。

大学入試センターが認定した英語の民間試験は7団体8種類ある。このうち「実用英語技能検定(英検)」は日常生活から仕事まで幅広く使える基礎的な英語力を試し、「GTEC」は主に中高生向けに開発された。「TOEFL」は留学向け、「TOEIC」はビジネス向けとされる。
「それぞれ測ろうとする能力が違うため、問題の内容や採点方法も異なる。結果を横並びで比較することはできない」。京都工芸繊維大の羽藤由美教授(外国語教育)は強調する。
英語民間試験の活用は共通テストの目玉の一つ。受験生は20年4~12月の間にいずれかの試験を受け、センターはその点数を語学力の共通の物差しである欧州言語共通参照枠(CEFR、セファール)のランクに当てはめて大学に提供する。
ただ、各試験の採点方法や採点者の詳細は「営業秘密」として明かされていない部分が多い。一部の採点を海外拠点に任せている試験もある。
現時点で各試験の実施日や会場は多くが未定となっており、高校の現場からは「会場が遠い地方の生徒が不利になる」「練習で受験するたびに受験料がかかり、家庭の経済状況で差が出る」といった不安が漏れている。
各大学も英語民間試験の活用には慎重な姿勢が目立つ。5月時点の文部科学省の調査では、国立大の4割は合否の判定に活用せず出願資格にとどめるとした。一部の大学は、民間試験を受けなくても高校が調査書などで能力を保証すれば良いとしている。

国語と数学で導入する記述式問題は、マークシート式と比べて採点に時間がかかるうえ、採点者によって評価にブレが生じる恐れがある。18年の試行調査で国語の採点結果を抜き出してチェックしたところ、評価の修正が必要なものが0.3%見つかった。
共通テストの受験生は50万人を超えるとみられる。「予期していない解答も必ず出てくる。それをどう評価するか検討し、採点基準を修正していく必要があるが、短期間で十分対応できるのか」と予備校関係者は危惧する。
試行調査の国語の記述式問題では、生徒の自己採点がセンターの評価とずれていたケースが3割もあった。「受験生は実際より厳しめに自己採点してしまう傾向があり、大学選びで迷ってしまう可能性がある」(代々木ゼミナール教育総合研究所の佐藤雄太郎所長)
記述式の採点に時間がかかることから、試験結果の大学への提供は現行のセンター試験より1週間程度遅い2月9日以降となる。大学ごとの入試の日程はその分、窮屈になり、AO入試での共通テストの活用を見送るなど、入試方法を見直した大学もある。
各大学が共通テストをどう活用するかを含め、未確定のままとなっている部分は少なくない。
日本私立中学高等学校連合会の担当者は「高校生は非常に困惑している。受験の準備に影響が出ないよう、文科省は制度の周知に努め、大学に対しても早く入試方法の具体像を示すよう働きかけてほしい」と話している。