2019年7月17日(水)

満映の生き証人、岸富美子さん逝く

文化往来
2019/6/7 16:58
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映画編集者の岸富美子さんが98歳で世を去った。編集助手として日独合作映画「新しき土」(1937年)などについた後、39年に大陸に渡り、満州映画協会で女性編集者として活躍。戦後は内田吐夢監督らと共に東北電影製片廠に残り、「白毛女」(50年)などを手がけ、新中国の映画製作の礎を築いた。文字通り、戦前戦後の激動の映画史の生き証人だった。

戦前戦後の映画史を生き抜いた映画編集者、岸富美子さん=共同

戦前戦後の映画史を生き抜いた映画編集者、岸富美子さん=共同

15歳で京都の第一映画社に入り、溝口健二「浪華悲歌」(36年)で後に女性監督の草分けとなる助監督・坂根田鶴子の下で編集助手を務めた。さらにJOスタヂオでは伊丹万作、アーノルド・ファンク「新しき土」に参加。ドイツの女性編集者アリス・ルードヴィッヒに最新の編集技術を学んだ。

有能な女性が重用された大陸で編集者として忙しく働いたが、満映崩壊後は波瀾(はらん)万丈だった。ソ連侵攻後の玉砕覚悟の籠城、共産党による「精簡」と呼ばれる人員整理、炭鉱労働、学習会での自己批判……。過酷な状況の中で子供を産み、映画を希望に生き抜いた。

戦後の中国では多くの女性編集者を育てた。「アリスさんに仕込まれたドイツ式の編集を教えたのよ」とほほ笑んでいた岸さん。戦中の国策映画で学んだ技術が、戦後の新中国で花開く。皮肉な歴史の現実を力強く生きた人だった。

(古賀重樹)

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