2019年7月23日(火)

FRB政策に新興国連動 利下げ観測に先行利下げ
世界で緩和傾向、金融にひずみも

東南アジア
北米
2019/6/7 22:00
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【ニューヨーク=後藤達也】米中貿易戦争による景気の減速懸念で、世界で金融緩和の傾向が強まっている。米連邦準備理事会(FRB)の利下げ観測が浮上し、新興国でも先んじて利下げする事例が相次ぐ。新興国は膨大なドル建ての借金を抱えており、米国と金融政策の連動性が高まりやすい。世界の金利低下に拍車がかかり、金融のひずみが蓄積されるおそれがある。

市場の異変を象徴するのが、当面の金融政策の予想を映す米国の2年物国債利回りだ。7日に1.7%台まで急低下し、この1カ月で0.5%強下がった。低下のペースは2008年の金融危機以来だ。貿易戦争が激しさを増し、「世界景気は3四半期以内に後退期入りしかねない」(米モルガン・スタンレー)といった警戒感が浮上。景気下支えのために、FRBが今年だけで2~3回の利下げに動くとのシナリオを市場は織り込み始めた。

FRBではセントルイス連銀のブラード総裁が今週、「利下げが近く正当化される可能性がある」と指摘した。パウエル議長も「景気拡大を維持するために適切に行動する」と語った。最後に利上げした18年12月からわずか半年で、金融政策の方向感が百八十度変わろうとしている。

こうしたFRBの姿勢変化は新興国にも波及している。米利上げの影響で資本流出に見舞われ、18年に5度利上げしたフィリピン。それが一転、今年5月に6年半ぶりの利下げに動いた。マレーシアやニュージーランドも5月に2~3年ぶりの利下げに踏み切った。6月に入ってからもオーストラリアやインドが追随するように利下げした。

緩和競争の再来をみこし、余剰マネーは再び新興国に流れ込んでいる。国際金融協会(IIF)によると6月1週に36億ドルの資金が新興国に向かった。米中貿易戦争への懸念から5月は大幅な流出になったが、世界的な金融緩和の流れを受け、新興国にリスクマネーが回帰している。

18年は米利上げの継続で米国債の投資妙味が増し、新興国が資金流出に見舞われた。国内経済の混乱やインフレを招きかねず、各国は利上げで対抗せざるを得なくなった。ここにきてFRBが緩和的な姿勢を示すと、新興国も利下げで追随する方針に転じた。金融引き締めから緩和方向へと、米国と新興国の目まぐるしい連動は両者の結びつきが強まっていることを示す。

FRBと新興国をつなげるのが、基軸通貨ドルの存在だ。国際決済銀行(BIS)によると、新興国のドル建ての借金は3兆7千億ドル(約400兆円)に達する。08年の危機からFRBが緩和政策を続け、低利のドル供給を受けて10年間で2倍強に膨らんだ。足元の金利低下で負債はさらに膨らみそうで、将来金利が上昇に転じた際に新興国の債務危機を招きかねない。

米国の金融政策の転換には、目先の米景気回復を重視し、FRBに金融緩和を強く迫ってきたトランプ大統領の影響もある。FRBを起点にドミノ倒しのように緩和競争が広がり、世界で必要以上に金利が押し下げられるリスクもある。過度な金利低下は採算性の低い投資を活発にさせ、長い目で見た世界経済の安定性をそぐおそれがある。

米国で緩和余地が乏しくなっていることも事態を複雑にする。FRBのいまの政策金利は2.25~2.50%。過去の景気後退では5%程度の利下げで対応しており、「次の景気悪化時に政策金利の下限に直面する」(パウエル議長)。

8~9日に福岡市で20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議が開かれる。通商問題だけではなく、金融政策でも各国の利害が複雑にからみ、先進国と新興国が問題解決を探るのは難しい。自国優先の緩和競争が激化し、世界経済が不安定になるリスクが高まっている。

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