2019年7月18日(木)
速報 > 人事 > 記事

「財政黒字の維持は責務」 独財務相インタビュー詳細

英EU離脱
ドイツ政局
貿易摩擦
金融機関
ヨーロッパ
2019/6/6 23:12
保存
共有
印刷
その他

ドイツのメルケル政権を支える中道左派・社会民主党(SPD)の重鎮、オラフ・ショルツ副首相兼財務相が日本経済新聞の取材に応じた。混乱が続くドイツ政治について「連立政権は、この任期中は続けるということで発足した」と語り、大連立の維持に意欲をみせた。選挙で負け続きのSPD党内には党勢を立て直すため、連立から離脱すべきだとの声が強まっているが、その動きから一線を画した。一方で財政政策については「赤字にならないという義務を負っており、それを守ろうと思う」と述べ、財政黒字を維持したいとの考えを示した。インタビューの要旨は以下の通り。(聞き手は欧州総局編集委員 赤川省吾)

執務室で取材に応じるショルツ財務相

執務室で取材に応じるショルツ財務相

【G20財務相・中央銀行総裁会議】

――8~9日に福岡市で開かれる20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議では何を訴えるのでしょうか。

「議長国の日本は目下の情勢にふさわしいテーマを選んだと思う。G20、G7、そして経済協力開発機構(OECD)でも話し合っているが、法人税の最低税率で合意できるかが焦点となる。議論の進展に期待したい」

【ドイツ政局】

――5月23~26日の欧州議会選とブレーメン州議会選でSPDは惨敗しました。

「選挙結果は思わしくなかった。今後の選挙でいい結果を残せるように議論を始めた」

――緑の党は執行部を刷新して再出発したところ党勢が上向きました。あなたが党首になってSPDを再生させるつもりは。

「財務相で副首相も兼ねている。その職務に専念したい。ナーレス党首の辞任は残念だが、後継者をどう選ぶか話し合っているところだ」

――連立与党は、秋に政権の「中間評価」をすることになっています。そのままずるずると与党であり続けるつもりですか。

「中間評価は大切だと思う。さまざまなハードルはあったが、SPDがいくつか成果をもたらした。家庭の負担を軽くし、子育ての環境をよくした。住宅支援を手厚くし、国費で教育を支え、税制で研究開発を後押しする」

――成果ばかりというわけですか。目標未達のものは。

「仕掛かり中のものがいくつかある。(一定の条件を満たした低所得者の支給額を増やす)年金改革をハイル労働相と共同提案した。(旧東独地域の再建を目的として導入された)連帯付加税も見直し、2021年から100億ユーロ(1兆2000億円)を上回る減税を実現したい」

――連立からの離脱は排除しないということですか。

「連立政権は、この任期中は続けるということで発足した。今年は、その折り返し地点。その評価をするということだ」

【EUやECBの首脳人事】

――欧州議会選が終わり、欧州連合(EU)の首脳人事が焦点になってきました。

「欧州議会の会派の筆頭候補から選ぶのが望ましい。中道左派系のティメルマンス氏(オランダ出身)が次期欧州委員長にふさわしい」

――なぜドイツ出身のウェーバー氏ではないのですか。ドイツの副首相としてウェーバー氏を推してもいいような気がします。

「EUでは出身国は関係ない。政治信条の近さが大切だ」

――次期欧州委員長がドイツ人でないなら、欧州中央銀行(ECB)の次期総裁はドイツ人かもしれません。ドイツ連邦銀行のワイトマン総裁がECB総裁に転じることを後押ししますか。

「あなたは再び出身国を持ちだしたが、我々は国の垣根を越えた全欧州的な視点で物事をみつめないといけない。人口が多く、経済力もあり、欧州の中心に位置するドイツは特別な責任を負う。前進と妥協の双方の精神が欧州では必要だと思う。この観点からドラギECB総裁の後任も選ばれる。すでに議論は始まっており、いい人材もいる。ワイトマン独連銀総裁もいい人材の一人だと思う」

――ドイツは欧州統合に消極的だとの批判があります。EU内で孤立しているのではないでしょうか。

「そんなことはない。財務相として欧州統合に熱心に取り組んだ。昨年だけで統合を深めるため、法改正が必要な13ものプロジェクトに取り組んだ。3年前はたった3つしかなかった」

――欧州の将来は。

「必ず統合は深まる。SPDは19世紀初頭からそうした目標を追ってきた親欧政党だ。欧州大陸で安定した平和が永久に続くというプロジェクトがEUだと思う」

【欧州景気と財政政策】

――欧州景気が急速に冷え込むとの見方があります。

「伸びはやや鈍ったが、成長は続いている。どの経済予測も来年はEU、ドイツともに力強い成長が戻るとしている。雇用市場は底堅く、多くのドイツ企業が専門人材が足りないと嘆いている。成長の鈍化で税収の伸びがペースダウンする。だがプラスであることに変わりはなく、大騒ぎすることではない」

――ドイツは大幅な経常黒字国。不均衡是正に協力しないと批判されています。

「内需を拡大するために中低所得者向けの減税などさまざまな手段を講じている。公共投資も最高水準に引き上げた」

――財政黒字をやめるということはしないでしょうか。

「財政赤字を膨らませることはしないというのが政権合意。だが仮に経済危機になれば、必要なあらゆる措置をとる。ドイツには、さまざまな手段を講じる余裕がある。(発動すれば)ドイツだけでなく、EU全体が潤う。しかし、いまは危機ではない。それゆえ公債残高を年内に国内総生産(GDP)比で60%未満に減らすことが望ましい」

――大臣在任中は財政黒字を維持するということですね。

「連立政権は財政赤字にならないという義務を負っており、それを守ろうと思う」

――では保守系政治家だったショイブレ前財務相と、中道左派のあなたの政策はどこが違うのですか。

「そんな比較は気にしない。人によってやり方は異なるし、目標も違う。ほかの国に指図することなく親欧的な態度で臨むというのが私には大切だ」

――節約はドイツの美徳、ということわざがありますが、財政黒字と引き換えに南欧では反ドイツ機運が強まりました。

「そう思わない。ドイツ経済が好調であることが大切だと(周辺国も)思っている。危機の際にさまざまな手段を講じることができるからだ」

【ドイツ銀行】

――ドイツ銀行とコメルツ銀行は統合交渉が破談となりました。外資勢がコメルツ銀行を買収するのを容認しますか。

「ドイツ銀行とコメルツ銀行の話し合いは民間企業の案件だった。事態は注視していたが、あくまで当事者の企業の問題だと思う」

――政治家としてドイツ国内での金融再編を後押ししていました。

「欧州とドイツの銀行部門は効率的であるべきだと考える。ドイツは外資にも開かれた国であり、さまざまな国の銀行がドイツに拠点を構えている。ブレグジット(英のEU離脱)問題でロンドンからフランクフルトに業務を移した金融機関も多い。日本の銀行にも魅力的な立地だと思う。どんどん参入して競い合ってほしい。その一方でドイツ系の金融機関が強くあってほしいし、世界で活躍してほしい」

Olaf Scholz 社会民主党の重鎮で副首相、財務相、副党首の3ポストを兼ねる。労働社会相、ハンブルク州首相などを歴任。人当たりのよさから好感度ランキングでは常に上位。「SPDの首相候補」とされる。2018年から現職。60歳。

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ速報トップ



[PR]

日本経済新聞社の関連サイト

日経IDの関連サイト

日本経済新聞 関連情報

新しい日経電子版のお知らせ

より使いやすく、よりビジュアルに!日経電子版はデザインやページ構成を全面的に見直します。まず新たなトップページをご覧いただけます。

※もとの電子版にもすぐ戻れます。