大連立の維持に意欲 独財務相・SPD副党首
健全財政は堅持 不況なら「あらゆる措置」

2019/6/6 23:09
保存
共有
印刷
その他

【ベルリン=赤川省吾】ドイツのメルケル政権を支える中道左派・社会民主党(SPD)の副党首で副首相兼財務相のオラフ・ショルツ氏が日本経済新聞の取材に応じ「連立政権は、この任期中は続けるということで発足した」と語った。SPD党内では連立からの早期離脱論が強まるなか、大連立を維持したいとの意向をにじませた。財政政策では健全性を重んじ、財政黒字を保つ姿勢を示した。

執務室で取材に応じるショルツ財務相

執務室で取材に応じるショルツ財務相

ドイツでは保守系のキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)とSPDが大連立を組み、CDU出身のメルケル首相を支える。5月23~26日の欧州議会選と地方選ではSPDが惨敗し、党首が引責辞任する事態となった。党内では党勢を立て直すため早期に連立を解消し、下野すべきだとの声が強まっている。

これに対し、党の実力者であるショルツ氏は、大連立を2021年の任期満了まで維持することを前提にしている、という立場を示した。政権を投げ出すのは無責任だという考えをにじませた。

同時に不満のくすぶる党内にも配慮し、任期の折り返し地点で大連立政権を総括する今秋の「中間評価」には厳しい態度で臨む構えだ。ショルツ氏は「年金改革などが仕掛かり中」と述べており、SPDの提案をのむよう保守陣営に迫る作戦のようだ。

党執行部には「連立維持派」がなお多いとされるものの、政治リスクが消えたわけではない。直近の世論調査でSPDの支持率は10%台前半にまで落ち込んでいる。現実主義者のショルツ氏らが閣内で存在感を発揮できず、支持率が回復しないようだと、党内でくすぶる連立離脱論がおさえ込めなくなる恐れはある。

SPDは早ければ秋にも次期党首を決め、党を再生させる計画だ。ショルツ氏は有力な党首候補だが、取材には「(副首相と財務相の)職務に専念したい」とだけ語り、言質を与えなかった。

財政政策に関しては、財務相の在任中は財政黒字を維持する考えを強調した。「連立政権は財政赤字にならないという義務を負っており、それを守る」と明言した。

米中の貿易戦争をきっかけに欧州景気が冷え込むとの見方を強く否定し、「伸びはやや鈍ったが成長は続いている」として、財政出動で景気を支えるべきだとの論調をけん制した。

経常黒字をため込むドイツが批判されているのは意識している。いまのうちに財政再建を進めておき、将来に備えるべきだというのがショルツ氏の言い分だ。「仮に(景気が)失速すれば必要なあらゆる措置をとる」とも言及した。ドイツが不均衡の是正に協力していないとの指摘には「減税などを講じている。公共投資も最高水準に引き上げた」と反論した。

欧州では欧州連合(EU)首脳人事を巡る駆け引きがヤマ場を迎えた。メルケル首相は次期欧州委員長にドイツ出身で欧州議会の最大会派、欧州人民党(中道右派)の筆頭候補であるウェーバー氏を推している。

ショルツ氏は自身と同じ中道左派のティメルマンス氏(オランダ出身)こそ「次期欧州委員長にふさわしい」と明かし、メルケル首相との立場の違いを鮮明にした。

欧州中央銀行(ECB)の次期総裁については「ワイトマン独連銀総裁もいい人材のひとり」と評した。ドイツでは「ワイトマンECB総裁」への期待が高まっている。

Olaf Scholz 社会民主党の重鎮で副首相、財務相、副党首の3ポストを兼ねる。労働社会相、ハンブルク州首相などを歴任。人当たりのよさから好感度ランキングでは常に上位。「SPDの首相候補」とされる。2018年から現職。60歳。
保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]