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非日常にふれ評判のスターを見る 交流戦の楽しみ
スポーツライター 浜田昭八

2019/6/9 6:30
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「最近は巨人より広島の方がファンを連れてきてくれる」と、阪神球団の幹部から聞いたのは2年ほど前だった。確かに、広島を迎えたときの甲子園はカープ色に染まる。真っ赤な広島のレプリカユニホームを着たファンが、左翼のビジター専用応援席を大きくはみ出して球場の半分を埋める。この現象は甲子園だけではない。チームの勢いに呼応して、カープ人気の上昇は各球場でとどまるところを知らない。

パの「ビジター人気」どこまで

プロ球団は観客動員でも競っている。長い間、巨人と阪神がリードしていたが、そこへ広島が割り込んできた。パ・リーグも、福岡のソフトバンク、札幌の日本ハムなどが頑張って、セ球団に追いつけ、追い越せという状況をのぞかせるようになった。

ホームチーム一辺倒の大リーグと違って、わが球界の観客動員は「ビジター人気」に負う部分が大きい。その点でセの人気3球団は、他球団の台所を潤す役目を果たしている。この「ビジター人気」にあやかろうとした意図が、パ・リーグにはずっとあった。だから、30年も40年も前からパ側は「セ・パ交流戦」の実施を提唱し続けてきた。その都度、セ側は「人のフンドシで相撲をとろうなんて、虫がよすぎる」と、冷たく拒否してきた歴史がある。

適時打を放ち、ヤクルトの一塁手村上(右)と笑顔で話す日本ハム・清宮。2年目の若手が存在感を見せた3連戦だった=共同

適時打を放ち、ヤクルトの一塁手村上(右)と笑顔で話す日本ハム・清宮。2年目の若手が存在感を見せた3連戦だった=共同

我慢強いパ側の提唱がやっと認められ、2005年に交流戦が実現した。当初はホーム、ビジターで各3連戦の1球団あたり36試合でスタートした。だが、それでは「期間が長過ぎて間延びがする。両リーグの独自性も薄れる」という声が上がり、07年からはホーム、ビジター各2連戦の24試合に減った。それでも「多い。日程も組みにくい」という反発があって、15年からは1カード3試合のホームゲームを隔年で開催する、現行の18試合制になった。

今年の交流戦は4日からパ・リーグをホームチームとして始まった。なかなかの盛況だが、今後どんな声が当事者から上がるか分からない。問題は交流戦で潤ってきたパ側が自身の人気を盛り上げ、どれだけ「ビジター人気」のお返しをセ側に対してできるかだ。ソフトバンクや日本ハムの地元での人気は非常に盛り上がっている。だが、それはまだ「地方区」であって「全国区」に達してはいない。広島のように、敵地へもファンを"連れてくる"状態にはなっていない。

村上のパワー、山川の本塁打…

色々と問題はあろうが、試合はバラエティーに富んでいて面白い。中日・松坂大輔が西武時代の交流戦で本塁打を放ったような、選手の"非日常"に出くわすのは楽しい。守備が苦手なヤクルト・バレンティンがパ球場で指名打者になり、生き生きとする姿を見るのも興味深い。元オリックスの西勇輝は阪神移籍でバットを持ち、好打者でもあるところを見せた。この交流戦でパ投手の中にどんな好打者がいるかを探す楽しみもある。

評判になっている他リーグのスターに接することができるのも交流戦ならではだ。北海道の日本ハムファンは、ヤクルトの若き大砲、村上宗隆のパワーに目を見張ったことだろう。今年は神宮での対戦がないので、ヤクルトファンが日本ハムの清宮幸太郎、台湾の4割打者王柏融を見るのは来年までお預けである。

6日の広島戦で2打席連続本塁打を放った西武の山川=共同

6日の広島戦で2打席連続本塁打を放った西武の山川=共同

チーム同士の対戦とは別に、個人的な対決も注目したい。阪神の快足、近本光司は11日から福岡へ乗り込んでソフトバンクの「甲斐キャノン」こと甲斐拓也捕手の強肩に挑む。西武は同日から巨人を本拠に迎える。ホームランを量産している山川穂高と、腰を痛めている巨人・菅野智之の対戦が実現するか気がかりだ。

リーグをまたいだ移籍選手の存在も気になる。オリックスからDeNAへ移った捕手、伊藤光が4日の古巣との対戦でホームランを放った。本人の活躍もさることながら、パ各チームの情報をチームにもたらす功績が大きい。捕手はその役目を果たす適任者。西武から巨人へ移った炭谷銀仁朗の隠れた活躍はあるか。

過去の交流戦はパがセを圧倒してきた。負けるは、減収になるはで、セ側の不満はずっとくすぶっていた。これに対し、パ側はセの人気チームとの対戦でメディアへの露出が多くなり、興行収入も増えた。しかし、その利益をただ享受するだけではセ側に申し訳ないだろう。セ側も球界全体の繁栄のために、この興味深い交流戦の枠をもう少し広げる雅量を見せてほしい。様々な売り物が発掘されてきているのに、それを倉庫の奥へしまっておく手はなかろう。

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