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日銀緩和負け、米利下げ3回で104円も

米国の年内利下げ確率を見ると、3回が35%で主流となってきた。2回が31%、1回は12%である。4回の確率も16%ある。総じて、年内利下げ確率としては98%に達する。

5日もADP雇用リポートで非農業部門の雇用者数が前月比2万7千人増となり、9年ぶりの低水準となるや、利下げ確率が上昇するという一幕もあった。本番の雇用統計との相関がぶれるので、信頼度が高いとは言えない経済統計にも、市場が過敏に反応している。米国株式市場は「悪いニュースは良いニュース」とばかり歓迎したが、日本株の反応は複雑だ。米利下げがドル安・円高要因になるからだ。

それも、利下げ年内3回ともなれば、年初1月3日の「フラッシュ・クラッシュ」で瞬間的につけた1ドル=104円台が再び試される展開になる可能性がある。実際に、そのような読みを語る通貨投機筋も出てきた。特に、日銀の緩和政策の限界が顕在化しており、日米金利差拡大が予想される。最近のウォール街では、主要中央銀行の緩和競争が話題となり、米国の政策金利が2%前半なので、もっとも緩和余地ありと判断されている。それゆえ、日銀は緩和負けと言われるのだ。

ヘッジファンドも次の標的のひとつとして円に照準を合わせる。なお、ドルが売られ、買われる主要通貨としては、まずユーロが想定される。本日、欧州中央銀行(ECB)理事会が開催されるが、ECBも有力な緩和手段は限定されるので、FRBに対しては「緩和負け」しそうだ。

それでも円高バイアスが強いのは、円が安全通貨としても買われるからだ。金利差要因に加え、地政学的要因が勃発すれば、円高圧力はさらに強まる。振り返れば、昨年は年間利上げ回数がもっぱら材料視された。今年の年初でも、2019年内利上げが2回か1回か「無し」か議論が割れていた。「場合によっては利下げも」という程度の扱いであった。それが、今や、利下げ回数が市場変動要因となっている。

ただし、利下げ確率そのものも変動するので、要注意だ。G20大阪サミットで、万が一、電撃的な米中手打ちがあれば、一挙に利下げ期待は急低下しよう。そもそも冒頭に示したように、経済統計一つで振れている。従って、日米金利差に基づく投機的円買いも、超短期筋がボラティリティーを高めることになりそうだ。

豊島逸夫(としま・いつお)
豊島&アソシエイツ代表。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラー。チューリヒ、NYでの豊富な相場体験とヘッジファンド・欧米年金などの幅広いネットワークをもとに、独立系の立場から自由に分かりやすく経済市場動向を説く。株式・債券・外為・商品を総合的にカバー。日経マネー「豊島逸夫の世界経済の深層真理」を連載。
・公式サイト(www.toshimajibu.org)
・ブルームバーグ情報提供社コードGLD(Toshima&Associates)
・ツイッター@jefftoshima
・業務窓口はitsuo.toshima@toshimajibu.org

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