2019年9月24日(火)

楽天とNECの割安基地局 5G通信料金を左右

2019/6/5 23:00
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10月に新規参入する楽天が通信料金の引き下げに打って出ようとしている。楽天は5日、割安な通信基地局の整備でNECと提携すると発表した。2020年春から始まる次世代通信規格「5G」サービスの整備費を抑えて値下げ原資をひねり出し、大手3社からシェアを奪う試みだ。楽天の新技術は十分な通信品質が確保できるか不透明な部分もあるが、5G時代の攻防が静かに始まっている。

楽天の三木谷氏はクラウド技術を生かした携帯インフラの強みを強調する

NECが開発した5G対応の無線アンテナ

現行規格「4G」の無線インフラで、新興の通信機器メーカーの米アルティオスター・ネットワークスなどのソフトウエア技術を採用した楽天。割高な専用機器ではなく汎用サーバー上で無線インフラを構成するクラウド技術によって、既存3社と比べてコストを単純計算で5分の1以下の約6千億円の整備費用で全国展開する計画だ。

5Gではアルティオスターなどが提供する既存設備のソフトを更新。NECが提供する5Gの無線アンテナを追加して5G化を進める戦略だ。

スウェーデンのエリクソンや中国の華為技術(ファーウェイ)などの基地局はアンテナ部分や信号処理部分などを異なるメーカーの機器で組み合わせられず、コストがかかる要因になっていた。楽天のインフラ構築に関わる関係者は「(基地局大手は)異なるメーカーの機器をつないで動作できないようにし顧客を囲い込んでいる」と話す。

楽天は協業先に仕様を公開して、適材適所で最適なメーカーの製品を組み合わせて基地局を構成できるようになる。こうしたインフラの「オープン化」で、通信機器大手の囲い込みを逃れ、複数のメーカーからコストを抑えた最適な製品を選べるようにした。今回のNECとの提携は5G無線アンテナでNECが最も条件に合致したからだ。

国内の通信4社が総務省に提出した5Gの設備投資計画によると、NTTドコモは24年度までに7950億円、KDDIは4667億円を投じるのに対し、楽天は1946億円にとどまる。楽天の基地局1基当たりの費用は約820万円とドコモと比べて2割前後の水準で最も安い計算だ。

ドコモとは投資額に6千億円の開きがあり、この金額差は後発のハンディを補う武器になる。楽天の三木谷浩史会長兼社長は「プラットフォームで削減したコストを利用者に還元する」と指摘。「基本的にいつでも加入し、いつでもやめられる超シンプルな料金プランにする」とも述べ、2年縛りなどで顧客を囲い込む大手をけん制する。

もっとも競合他社は、楽天が進めるクラウド化やオープン化戦略には冷ややかだ。世界でも初めての技術だけに「安定的に通信環境を確保できるか注視している」(NTTグループ幹部)。通信技術に詳しい調査会社MCA(東京・千代田)の天野浩徳代表も「楽天は競争力の高い料金を実現できる可能性はあるが、商用レベルの安定したネットワークを運用できるかどうか課題が残っている」と指摘する。

オープン化で複数メーカーの機器を組み合わせる楽天の戦略は一方で不具合が起きた場合に運用面で課題もある。楽天は納入するメーカー間で情報を共有して運用効率を高められると強調する。

楽天の賭けが成功すれば5G時代の通信料金の主導権は同社が握ることになる。一方で対応に手間取れば、安定した既存の基地局で整備を進める大手3社が引き続き顧客を囲い込み、料金競争の活性化は画餅に終わる可能性もある。どちらが笑うかは未知数だが、5G時代の競争の号砲が鳴ったことだけは確かだ。(堀越功、広井洋一郎)

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