2019年7月24日(水)

成長持続へ安定選択 タイ首相にプラユット氏選出

東南アジア
2019/6/5 22:00 (2019/6/6 1:13更新)
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【バンコク=村松洋兵】タイの国会は5日、軍事政権トップのプラユット暫定首相を新首相に選出した。2014年のクーデター後に政情を安定させ、経済が好転したことが「続投」を後押しした。民政復帰で国内外の信頼を回復し、先進国入りを前に成長が鈍る「中所得国のわな」から脱却できるかが新政権の課題となる。

軍政トップのプラユット暫定首相が「続投」する=三村幸作撮影

軍政トップのプラユット暫定首相が「続投」する=三村幸作撮影

首相指名選挙は上院(定数250)と下院(同500)の全議員が投票し、過半数を得た候補が選ばれる。3月の総選挙(下院選)で第2党となった親軍政党「国民国家の力党」は4日までに同党を含む計19党の連立で合意し、下院で過半数を確保した。軍政が事実上指名した上院議員は全員がプラユット氏に投票する見通しで、同氏の指名が確実となった。

国軍出身のプラユット氏は14年の軍事クーデターを主導し、暫定首相に就いた。当時のタイは農民や低所得層を支持基盤とするタクシン元首相派と、軍や都市部の中産階級を中心とする保守派の対立が激化し、経済が低迷していた。

軍政が国の全権を握ると、経済は次第に回復に向かった。実質国内総生産(GDP)成長率は14年には1%まで落ち込んだが、18年は4.1%と過去6年で最も高い伸びを記録した。

だが、タイの民主化後退を懸念した先進国からの投資は低迷している。約6000社が進出し最大の投資国である日本は17年に897億バーツ(約3100億円)と14年比5割減、米国と欧州連合(EU)は同6割減と大きく落ち込んだ。

タイは自動車や電機など外資を誘致して成長してきたが、先進国入りを前に足踏みする「中所得国のわな」に陥っている。1人当たりGDPは約7600ドル(約82万円)と、ライバルのマレーシア(約1万1000ドル)に水をあけられた。

アパレル生産など労働集約型産業はカンボジアなど人件費が安い周辺国にシフトしている。親軍政党は公約に最低賃金の約3割引き上げを掲げた経緯があり、人件費の上昇は加速する可能性もある。タイ工業連盟のクリアンクライ副会長は「実行されれば競争力が失われる」と警戒する。

軍政は成長の持続を目指して産業高度化策「タイランド4.0」をまとめ、次世代自動車やロボットなど10分野を重点領域として新産業を創出する構想を打ち出した。バンコク東方の経済特区「東部経済回廊(EEC)」ではハイテク産業の誘致に取り組み、環太平洋経済連携協定(TPP11)加盟にも前向きだ。タイ経済に詳しい桃山学院大の江川暁夫准教授は「タイは長年の政治対立で成長戦略を立てられずにいたが、軍政は方向性を示した」と指摘する。

軍の影響力は残るが形式上は民政に移行することで、産業高度化に欠かせない海外からの投資が増える可能性がある。半面、強権を行使できた軍政に比べて政策実行のスピードが低下する公算も大きい。

下院は親軍勢力が半数をわずかに上回る規模にとどまり、国会審議で与野党攻防が激化するのは必至だ。19党からなる連立与党の足並みが乱れれば、予算案など重要法案を可決できず、政権運営が困難になる事態も予想される。

5日には連立与党の一角である民主党のアピシット元首相が議員辞職を表明した。タマサート大学の水上祐二客員研究員は「今後は閣僚人事などに不満を持つ議員などの造反が相次ぐ可能性がある」とみる。

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