2019年8月19日(月)

伊制裁手続き入り「正当化」 EUが財政で報告書

2019/6/5 19:30
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【ブリュッセル=竹内康雄】欧州連合(EU)の欧州委員会は5日、イタリアの財政状況がEUの基準を逸脱しているとして、EU財政ルールに基づく制裁手続き入りが「正当化される」との報告書を公表した。EU各国が協議した上で夏前にも制裁に踏み切る可能性がある。伊ポピュリズム(大衆迎合主義)政権の反発は確実で、対立が深まるのは避けられない。

コンテ内閣は崩壊の危機にある=ロイター

EUは、ルール違反が深刻な加盟国には「過剰財政赤字是正手続き(EDP)」と呼ぶ制裁措置を発動し、財政をEUの監視下に置ける。欧州委は近くEDPの開始を加盟国でつくる閣僚理事会に勧告する方針だ。各国は実際に制裁手続きに入るかを、14日のEU財務相会合や20~21日のEU首脳会議で議論する。

欧州委は2018年秋にも財政規律を巡ってコンテ伊政権と対立した経緯がある。イタリアの19年予算案がEUの財政ルールに違反したとして制裁措置の発動を準備したが、交渉終盤で伊政府が歩み寄り、最終的には制裁手続き入りを避けた。

だがその後も伊財政が好転する兆しはない。コンテ政権を支える与党の極右「同盟」と左派「五つ星運動」は増税や歳出減に慎重だ。18年の伊公的債務は国内総生産(GDP)比で132.2%と、ユーロ圏ではギリシャに次いで高い。財政改善策として20年に計画する付加価値税(消費税に相当)の引き上げも、景気低迷を理由に「増税は避けたい」(トリア経済・財務相)との見送り論が政権内で広がる。

EUは単一通貨ユーロの信認を守るため、加盟国の財政を巡ってGDP比で(1)財政赤字は3%を超えない(2)公的債務は60%を超えないという共通ルールを設けている。報告書は「イタリアは約束した改革の一部にしか取り組んでいない」と批判。政府の基準を守る意欲が乏しいとして、EDP入りが適切と判断した。

実際に制裁手続きに入れば、EUが示す対策に沿って歳出削減や増税を迫られる。GDPの0.2%(イタリアの場合は35億ユーロ)の制裁金を科されたり、EU関連の基金の利用を制限されたりする可能性もある。

EDP入りはそれほど珍しくない。11年の欧州債務危機時には仏独にも発動した。だが「反EU」の姿勢をみせる伊政権とEUの関係はすでに悪化しており、EUが制裁手続きに入れば対立の激化は避けられない。イタリアはユーロ圏3位の大国で、EU側は対立を深めたくないのが本音だ。

ロイター通信によると、国際通貨基金(IMF)は来週、「イタリアの債務はユーロ圏経済に大きなリスク」との見解を示す。ユーロ圏の安定のために欧州委は財政悪化に強い姿勢を打ち出す必要がある。一方で、EUで財政を担うモスコビシ欧州委員は5日の記者会見で「話し合いのドアは開いている」と語った。伊政府がすぐに改革に取り組めば、EDP入りは避けられるとの認識を示し、軟着陸を模索する。

読みにくいのがイタリア側だ。連立を組む「同盟」と「五つ星」は政権運営を巡って対立しており、政権瓦解の危機にある。コンテ首相は3日、与党間の対立が解消されなければ首相を辞任する用意があると表明した。

金融市場では連立政権の亀裂は修復できないとの見方から9月の総選挙を予測する声も出てきた。総選挙が意識されると、国民に負担を強いる政策は影を潜め、減税や財政出動に流れやすい。

コンテ氏は「EUのルールは尊重すべきだ」と訴える。しかし同盟を率いるサルビーニ副首相は高い支持を追い風に大型減税に意欲をみせるなど、EUへの対決姿勢を強めている。

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