2019年7月23日(火)

韓国に米中の影 半導体不振で4月の経常収支7年ぶり赤字

経済
朝鮮半島
2019/6/5 19:13
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【ソウル=鈴木壮太郎】米中貿易戦争が韓国経済に影を落としはじめた。4月は海外とのモノやサービスなどの取引を表す経常収支が7年ぶりの赤字に転落した。米政府による中国の通信機器最大手、華為技術(ファーウェイ)への実質的な輸出禁止措置発動で主力の輸出品目である半導体は市況回復が遅れる見通しだ。輸出不振が長期化する懸念が強まってきた。

半導体メモリー市況の回復遅れはサムスン電子の業績を直撃する(ソウル郊外の同社の半導体工場)=サムスン電子提供

韓国銀行(中央銀行)が5日発表した4月の国際収支(暫定値)によると、経常収支は6億6000万ドル(約714億円)の赤字だった。世界貿易の減速に伴う輸出減少に、企業による配当の海外送金シーズンが重なった。経常収支の赤字転落は欧州債務危機の影響で輸出が振るわなかった2012年4月以来だ。

経常収支の悪化は通貨安の要因になる。だが、韓国ウォンの対ドル相場は5日、1ドル=1178.6ウォンに上昇した。市場は4月の経常赤字を織り込み済みで、急ピッチで進んでいたウォン安が一段落するとの見方からドルが売られた。

韓国銀行は「4月の赤字は配当の支払いという季節要因。基調をみてほしい」と説明するが、輸出不振が赤字転落の主因なのは間違いない。

産業通商資源省によると、5月の輸出は前年同月比9%減の459億1000万ドルで6カ月連続のマイナスだった。減少幅は2月の11%を底に4月は2%まで縮小したが、5月は再び拡大した。

輸出の足かせは品目別で半導体、地域別では中国だ。輸出全体の2割近くを占める半導体が前年同月比31%減った。自動車や機械は堅調だったが、石油化学やディスプレーも2桁減だった。

地域別では最大の貿易相手、中国が同20%減った。米中貿易戦争で中国企業との取引が滞り始めた。米国は6%増、日本は2%増と堅調だった。

輸出に今後、大きく影響しそうなのは、米国による対中制裁関税「第4弾」と、ファーウェイと米企業との取引の事実上の禁止措置だ。IT(情報技術)機器に使う半導体メモリーの世界市場はサムスン電子とSKハイニックスの韓国2社の占有率が高い。ファーウェイの生産が抑制されれば市況回復は遅れ、こうした韓国企業が打撃を受けそうだ。

主要メーカーで構成する世界半導体市場統計(WSTS)は、19年の市場規模が前年より12%減るとの予測を発表した。18年秋時点では2.6%成長を予測していた。

半導体メモリー市況は18年10月から悪化しているが、グーグルやフェイスブックなど米IT大手によるデータセンター投資が遅れ、メモリーの在庫が消化されない一時的な要因のためだとされてきた。在庫調整が進む19年下半期以降、再び回復に向かうとの見方が支配的だった。

だが、米中貿易戦争の激化は楽観論を吹き飛ばした。市場ではファーウェイに供給できなくなった米マイクロン・テクノロジーのメモリーが市場に流れ、需給はさらに緩むとの観測も浮上する。有進投資証券の李承禹(イ・スンウ)常務は「メモリー市況の底は20年の第1四半期~2四半期にずれ込む」と分析する。

メモリー市況の回復の遅れは韓国政府や通貨当局が描いてきた「19年下半期の経済回復シナリオ」にも暗い影を落とす。

「韓国経済は下半期にかけて回復に向かう」――。洪楠基(ホン・ナムギ)経済副首相兼企画財政相や韓国銀行の李柱烈(イ・ジュヨル)総裁はこれまでこう口をそろえてきたが、これは半導体市況が回復し、輸出や投資が再び上向くことを前提にしていたからだ。

韓国銀行は4月、19年の国内総生産(GDP)成長率見通しを従来の2.6%から2.5%に下方修正した。だが、民間では2%を下回るとの予測も出ている。市場では政府・通貨当局が成長率予測をさらに下方修正するとの見方が広がる。

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