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三島賞と山本賞、文体に高い評価

純文学を対象とする第32回三島由紀夫賞は新人の三国美千子(40)、エンターテインメント小説対象の山本周五郎賞はデビュー16年の朝倉かすみ(58)という対照的な2人に決まった。

三国は受賞作「いかれころ」で新潮新人賞を受けて作家デビューしたばかり。昭和58年(1983年)の河内(大阪府東部)を舞台に、不穏さをはらんだ旧家の日常をつづった物語だ。「故郷の河内はとても思い入れのある土地。小説の舞台として描くには思い切りが必要だった分、時間がかかってしまった」と振り返る。

朝倉の受賞作「平場の月」は50歳を過ぎ、地元の埼玉県南部に戻った男女の恋愛を描く。妻との離婚や夫との離婚を経て、ともに一人暮らしの2人は、経済的には恵まれていない。朝倉は「書き続けていくうち、近年は社会的に立場の弱い人を書きたいと思うようになっている」と話した。

ともに評価されたのは文体。三島賞選考委員の町田康は三国作品について「視点人物は4歳の少女だが、そこに大人になった彼女の視点も加わり、『ダブルフォーカス』とでもいうべき語りが巧みだった」と語った。一方、山本賞選考委員の石田衣良も朝倉作品について「作品に合った新しい文体を作り上げている」と評した。

両賞とも次回からは選考委員が入れ替わり、三島賞は川上未映子、高橋源一郎、多和田葉子、中村文則、松家仁之という5人全員が新任。山本賞では留任の荻原浩以外、伊坂幸太郎、江國香織、今野敏、三浦しをんという4人が新たに選考委員となる。石田は山本賞選考委員の任期を終えるにあたって「王道の直木賞では難しい、とんがった受賞作を選ぶことができた」と振り返った。芥川・直木賞とはひと味もふた味も違う選考を今後も期待したい。

(中野稔)

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