2019年8月26日(月)

働く高齢者の年金減額、見直しに難題 財源のメドなく

2019/6/5 11:30 (2019/6/5 21:22更新)
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政府が検討している在職老齢年金制度の見直しが年金改革の焦点になりそうだ。働いて一定の収入がある場合に年金を減らす同制度は、高齢者の働く意欲をそいでいるとの批判が強い。制度を廃止するなら年金財政は1兆円の支出増が見込まれるが、財源の手当てはついていない一方、65~69歳の就労を促す効果は必ずしも大きくないとの見方もある。制度改革への道筋は険しそうだ。

政府は6月下旬に決定する経済財政運営の基本方針(骨太の方針)の原案で、在職老齢年金について「あり方を含め検討し、財政検証を踏まえ、法案提出も含めた必要な措置を講じる」との方針を明記した。人生100年時代を見据えて高齢者の就労を促し、社会保障制度の支え手を増やしたいとの狙いがある。

在職老齢年金は、会社員が加入する厚生年金をもらいながら働く人が対象だ。国は保険料を負担する現役世代に配慮し、高齢者が受け取っている給与と年金の合計額が一定の水準を超えると、年金を減額したり、全額を支給停止したりする。

現行制度は複雑だ。60~64歳の場合、まず賃金と年金の合計が月28万円を超えると、超過分の半額を年金から差し引く。さらに賃金が47万円を超えている場合は、上回った分だけ年金をカットするなど、年金と賃金の水準で仕組みが変わる。

例えば年金額が月18万円の60~64歳の高齢者が月30万円の賃金で働く場合、もらえる年金は10万円減額され、8万円となる。一方、65歳以上なら月47万円を基準に超過分の半額を減らす。

60~64歳の制度は厚生年金の支給開始年齢が完全に65歳まで引き上げられた段階で対象者がいなくなる。男性は2025年度、女性は30年度だ。与党内には30年度より前に60~64歳の年金減額の仕組みを見直すべきだとの意見がある。将来はすべての制度を廃止するよう求める声もある。

だが年金制度を所管すする厚生労働省幹部は「見直しは簡単ではない」と話す。理由の一つが就労促進効果が乏しいとの指摘があることだ。特に、65歳以上の制度で年金減額の対象になるほど稼いでいる人は、企業経営者などごくわずかだ。

内閣府が18年にまとめた調査では60~64歳では働く意欲を損なっている傾向があったものの、65~69歳では就業への影響はほとんどみられなかった。65歳以上の制度の廃止や縮小を議論すれば、富裕層を優遇しているとの批判も出かねない。

もう一つの理由は財源だ。現行制度で支給が減らされている年金額は年1兆円を上回る。制度廃止に伴う財源の手当てはこれからで、そのまま制度をなくせばいまの高齢世代が受け取る年金が増え、将来世代にツケが回る。財務省は制度を見直す場合、高所得の高齢者に給付する基礎年金の一部を停止する制度や、年金課税の強化を併せて検討するよう求めている。

政府として骨太の方針に盛り込む以上、厚労省は対策を検討する必要があるが、20年をめどに国会への提出をめざす年金改革の関連法案でどれだけ具体策に踏み込めるかはまだ見通せない。

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