2019年8月19日(月)

FRB、強まる利下げ観測 パウエル議長「適切に行動」

トランプ政権
貿易摩擦
2019/6/5 0:00
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【シカゴ=河浪武史】米連邦準備理事会(FRB)の早期利下げ観測が強まってきた。パウエル議長は4日の講演で貿易戦争の激化に懸念を示し、「景気拡大を持続させるため適切に行動する」と述べた。景気減速を見込んで先手を打つ「予防的な利下げ」を唱える声もFRB内に浮上する。市場は年内の利下げをほぼ織り込み、夏以降の会合で緩和に転じるとの予測も出てきた。

4日、パウエル議長は貿易戦争の激化に懸念を示した(シカゴ)=AP

4日、パウエル議長は貿易戦争の激化に懸念を示した(シカゴ)=AP

パウエル氏は4日、FRBがシカゴで開いた金融政策を巡る討論会で講演した。中国などとの貿易問題について「いつどのように決着するのかわからない」としたうえで、「米国経済の見通しにどう影響するかを注視し、米経済の拡大や雇用の力強さ、2%のインフレ率を保つために適切に行動するだろう」と語った。利下げの示唆は避けつつ、景気下振れリスクが高まれば金融緩和への転換も辞さない姿勢をにじませた。

早期利下げ観測に火を付けたのは、セントルイス連銀のブラード総裁だ。3日、シカゴでの講演で「景気減速への保険として、政策金利の引き下げが近く正当化される可能性がある」と主張した。FRB内ではクラリダ副議長らも「景気減速が明らかになれば、緩和的な政策を講じる」と指摘してきたが、「近く」と時期を示したのはブラード氏が初めてだ。

金融引き締めに慎重な「ハト派」として知られるブラード氏は2019年、金融政策を決める米連邦公開市場委員会(FOMC)で投票権を持っている。金利先物市場はブラード氏の発言を受けて金融緩和観測を一気に強め、年内に0.25%の利下げに踏み切る可能性を98%の確率で織り込んだ。9月までに0.5%利下げするとの予測も49%に達する。

米国は失業率が約半世紀ぶりの水準に下がるなど、景気の基調は底堅い。拡大局面は6月で丸10年間に達し、戦後最長を更新するのは確実だ。にもかかわらず、政策当局から利下げ論が相次ぐのは、貿易戦争の激化による景気減速懸念が高まっているからだ。

米サプライマネジメント協会(ISM)が3日発表した5月の製造業景況感指数は52.1と前月比0.7ポイント低下し、16年10月以来2年7カ月ぶりの低水準となった。トランプ米大統領が中国やメキシコへの制裁関税を次々と打ち出し、製造業では供給網への影響を懸念して生産や投資を手控える動きが広がる。

米景気は年後半に調整局面に突入する可能性も取り沙汰され始めた。著名投資家のスタンレー・ドラッケンミラー氏は「景気後退に入ってはいないが、注意深く目をこらした方がいい」と話す。

経済学者でパウエル体制の理論的支柱であるクラリダ副議長は「予防的な利下げ」という表現を使い始めた。グリーンスパン体制下の1998年、米景気は現在と同じく拡大局面だったが、FRBは同年9月から11月にかけて小規模の利下げに踏み切ったことがある。アジア通貨危機で市場が動揺したためだが、利下げ効果で米景気はその後も3年近く拡大局面が続いた。現体制でも景気悪化を待たず、先手を打って金融緩和に踏み切るとの見方が出ている。

FRBは2008年の金融危機後も、積極的な金融緩和で景気回復局面へと復した成功体験がある。日銀幹部は「今回はFRBに出遅れるわけにはいかない」とパウエル体制の出方を注視する。貿易戦争の余波で、主要中銀の緩和競争が再燃する可能性もある。

金融市場の動きも激しくなってきた。4日の東京外国為替市場では円高・ドル安が進み、一時1ドル=107円台後半と約5カ月ぶりの水準に上昇した。大和証券の亀岡裕次氏は「米金利低下を受けたドル安・円高」と指摘する。

3日の米国市場では米10年物国債の利回り低下(価格は上昇)が加速し、一時2.06%と1年9カ月ぶりの低水準を付けた。米3カ月物国債の利回りを下回り、景気後退の兆しとされる長短金利の逆転(逆イールド)は広がる一方だ。

4日の東京市場でも10年物国債の利回りが一時、マイナス0.110%と約2年10カ月ぶりの水準に低下した。ただ金利の低下余地は米国の方が大きく、日米金利差の縮小が円高を招くリスクは残る。

円高は海外売上高比率の高い自動車や電機など輸出産業の収益を圧迫する。トヨタ自動車は想定為替レートを1ドル=110円としており、対ドルで1円円高が進行すれば営業利益を400億円押し下げる。

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