2019年7月18日(木)

豪中銀利下げ、過去最低1.25%に 景気減速を警戒

南西ア・オセアニア
2019/6/4 17:46
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【シドニー=松本史】オーストラリア準備銀行(中央銀行)は4日の理事会で、政策金利を0.25%引き下げ、過去最低の1.25%にすると決定した。利下げは2016年8月以来、2年10カ月ぶり。豪州は27年超の景気拡大が続くが、家計債務が膨らむ中、住宅価格が下がり消費を冷やしている。最大の貿易相手国の中国でも景気減速懸念が強まっており、金融緩和で経済を下支えする。

シドニーでは売り出し中の住宅が目立つ

中銀のロウ総裁は声明で、「所得の伸びの鈍さと住宅価格下落による家計消費の見通しの弱さ」が豪経済のリスクだと指摘した。利下げが「失業率の低下を促進し、インフレ目標の達成につながるだろう」と述べた。

雇用促進のため「8月と11月に利下げがあり、金利は0.75%まで下がる」(ウエストパック銀行のチーフエコノミスト、ビル・エバンス氏)などと、市場ではさらなる利下げがあるとの見方が出ている。

豪経済は、18年10~12月期で一般的な景気後退の定義である「2四半期連続のマイナス成長」を経験しない期間が110四半期となり、世界最長記録を更新し続けている。だが、足元の豪経済に逆風を吹かせているのが、住宅価格の変調だ。

高級住宅が並ぶシドニー東部では「売り出し中」と看板を掲げた住宅が目立つ。同地区で不動産業を営むニック・パパス氏は「2年ほど前から価格が下がり始めた」とこぼす。

歴史的な低金利で13年ごろから上昇を続けていたが、18年に下落に転じた。中国の資本流出規制や、不動産バブルを懸念する豪政府の要請で金融機関が住宅ローン審査を厳しくしたのが響いた。豪統計局によると、最大都市シドニーの18年10~12月期の住宅価格指数は前年同期比7.8%低下と大きく沈んだ。4四半期連続のマイナスだ。

11年末からの中銀の利下げで住宅購入意欲が刺激された半面、家計債務の膨張を招いた。国際決済銀行(BIS)によると、豪州の家計債務の国内総生産(GDP)比率は17年に121%に達した。日本(57.2%)や米国(77.8%)を大きく上回る。

こうした状況下での住宅価格の下落で、資産の目減りが消費を冷やす「逆資産効果」が働いている。GDPの6割を占める家計消費は冷え込み、1~3月期の小売売上高(季節調整済み)は18年10~12月期比で0.1%減った。物価の停滞も続き、1~3月期の消費者物価指数(CPI)上昇率は前年同期比1.3%にとどまった。

失業率も気がかりだ。2月の4.9%から4月には5.2%まで上昇した。中銀は20年終わりまで失業率が5%程度で推移すると見込む。

豪州の輸出の3割が向かう中国の景気減速への不安も根強い。ロウ氏は声明で、米国との「貿易摩擦で、世界経済の下押しリスクが増している」と指摘した。

中国景気の影響が直撃するのが豪州最大の輸出品、鉄鉱石だ。豪州産鉄鉱石の価格は1トン100ドル前後と約5年ぶり高値圏にあるが「インフラや住宅在庫の飽和、労働人口の減少などが将来的に中国の鉄鉱石需要を落ち込ませる」(調査会社モーニングスターのマシュー・ホッジ氏)との指摘は多い。ホッジ氏は鉄鉱石価格は20年に65ドル、22年には40ドルまで下落するとみる。

鉄鉱石に次ぐ輸出品の石炭も、中国と貿易上のリスクを抱える。豪州は18年、中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)を次世代通信規格「5G」から排除すると決めた。19年に入り中国の一部の港で、豪州産石炭の通関手続きが滞っていると報じられた。ファーウェイ排除に対する中国からの意趣返しとの見方がある。

豪州の労働生産性の鈍化も懸念される。豪生産性委員会は4日、17年度(17年7月~18年6月)の労働生産性の伸びが0.4%と1年前の1.3%から低下したと発表した。鉱業に限れば4.6%からマイナス0.5%に悪化した。

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